第6話 聖女様への恩返しを考えよう
「ただいまー」
僕は、誰もいないアパートに向かって挨拶をした。いつものことなので、いまさら寂しいなどとは思わない。
「……はぁ。すげー緊張したぁ……。本当に蓮とか楓さんとかと話しているときよりも断然緊張するもんだなぁ」
僕は、そうつぶやきながらかばんをしまったり服を着替えたりする。そして、冷蔵庫からカップラーメンを取り出して、お湯を沸かし用意をする。
3分……じゃなくて、どこかの天気を操る人と、家出少年が出てくる映画が「知らないの? 2分が美味いんだよ?」って言っていたような言ってなかったような気がしたので、2分で蓋を開けた。
それが本当のことなのか真偽は不明だが、その映画が好きだったのでせっかくだし2分で蓋を開けて実食。
味の差は分からないけど、映画のおかげか美味しい気がする……いや、気の所為だな。
ズルズルズルズルと音を鳴らして食べ続ける。
「それにしても、こんなにしてくれてなにか返さないといけないよな。何返そう?」
変なやつだと色々言われそうだし、やっぱまともな方がいいよな。
どういうのだろう? 東雲さんといったらお金持ちな感じもするし、やっぱネックレスみたいな?
……いやいやいやいや!! ネックレスなんてあげてしまったら僕が好きなんだって思わせてしまうかもしれないし!!
それに、いろんな人がいる前でネックレスをあげるとか、すごい緊張するんだけど!!
「よしっ、却下」
じゃあ……何にしようか? 東雲さんって、なにか必要としていたっけ?
「…………」
ないな。完璧な東雲さんに必要なものなんてないだろう。必要なものなんて、もうほとんどすべて補うことができているんだからね。
はぁ……。
本当に決まらないよ。
……うーん……あっ……!
「そういえば、下校時間はいつも一人で帰っているとかなんとか言っていたな。こうなったら……」
東雲さんの友達になろうかな。
……僕なんかがなっても嬉しくはないんだろうけど、さっきも東雲さんは僕の言葉で笑ってくれた。とても、嬉しかった。
一緒に帰ろうかな。
そうすれば、東雲さんにとっても下校の間の話し相手もちゃんとできて嬉しいだろうし、僕も嬉しい。
どっちにとっても利益のあることだよね。……まぁ、僕のほうが利益が多すぎて、不釣り合いのような感じもしなくもないんだけど……。
「決めた……! 明日、一緒に帰ろって誘おう」
僕は、多分、もし東雲さんが友達になっていろいろと話してくれたら、高校で3人目の友達か……!
でも、断られたら嫌だな……。それでも……
僕は、ちゃんと友達になりたいって言おう。東雲さんは、僕に弁当を作ってくれたり、一緒に帰ってくれたり。
僕のためにいろいろとしてくれているんだから。
「頑張ろうっと」
誰にも知られないところで、一人で決意をした僕であった。
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