第4話 聖女様との下校 1

「「「「さようならー」」」」


 帰りの挨拶を済ませると、イスをしまうガタガタという音がなり、そしてクラスメイトは一斉に扉から人が出ていった。


 ……あっ、そういえばお弁当を返していなかったな。返そっと。


 僕は、聖女様にお弁当を返そうとすると、聖女様がいた席にはもう人がいなかった。


 多分、さっきの人の波のどこかにいたのだろう。


「……はぁ、どうしようか。とりあえず追うか」


 まぁ、そんな文句を言っていても、別に聖女様は帰ってくることはない。


「あっ、蓮と楓さん。今日はちょっと先に帰ってて。聖女……じゃなくて用事があるから。」


「聖女様に用事か? まぁ、分かった。」


「うん、私もいいよ。それに、久しぶりに蓮と二人きりで下校デートできるし」


「そうだな。……あっ、そうだ、下校の途中に新しくできたカフェっぽい飲食店に寄らないか?」


「いいねっ、行こー!」


「…………」


「律くん、バイバーイ」


「じゃっ、律。またな」


「あ、うん……さようなら……」



 ……僕は何を見せられているのだろう? 自分がこうさせた原因だとはいえ……きつい。糖分があまりにも多い!


「……んじゃあ聖女様にお弁当を返しに行くかな」


 そして、僕は用意を済ませて靴箱に行き、靴を履いて校門を出ようとすると、どこからか声がかけられた。


「あのー……」


「ん……? あっ、聖女様! そうだ、お弁当ありがとうございました。すごい美味しかったです!」


「いえいえ、美味しいと言ってもらえて嬉しい限りです! それでそのお願いがあるのですが……」


「はい、なんでもどうぞ!」


「……一緒に帰りませんか?」


「…………は? えっ、いや…………ん?」


 何を言っているの、聖女様。言うと罪悪感があるし申し訳ない気持ちでいっぱいだけど……どうしようもなく言いたい。


 頭がおかしくなったのか?


「えーっと……何を言っているんです? それって……なにか裏があったりします?」


「いえ……別になにも?」


 僕の聞いている意味が分かっていないのか、少し顔を傾けた状態で不思議そうに答えてくれた。


 それにしても……聖女様は何を考えてそう言っているの?


「じゃあ、なんで一緒に帰りたいんですか? 僕と帰ってもなんの利点もないです……よね?」


「いえいえ、利点はありますよ。だって早川さんと一緒に帰れるんですから」


「………………ちょっとよく分からないかなー?」


 長い長い沈黙の末、やっとだした言葉はそんなものだった。


 な、なな……なななななな……何を言っているんだよ、この人は!?


 勘違いするぞ、聖女様が僕の事を好きなんだって、勘違いしちゃうぞ!?


「えーっと……でも、家が間逆の可能性とかは……?」


「いや、多分同じ方面だと思いますよ。だって、私達が昨日出会ったのは、あの公園の近くですから。つまり、多分同じ方面なのでしょう」


「それも、そうですよね……」


 どうしようかな……どうやったらこの提案を断ることができるかな……。


 ……いや、待てよ。


 なんで僕は断ることを前提にしてしまっているんだ? えーっと……他の人に見られたくないから?


 じゃあ、それと聖女様のお願いを聞いて聖女様を喜ばせる。どっちの方が僕としては嬉しいことなんだ?


 そう考えてみれば……聖女様と一緒に帰ったほうがいいかな。


「えーっと……私と一緒に帰ることがいやですか?」


「いや、嫌じゃないです。一緒に帰りますか!」


「ありがとうございますっ!」


 僕が、一緒に帰るというと、さっきの少し暗い顔が嘘のように変わり、笑顔になった。


 すごい、kawaii……。very cute!


 そして、一緒に帰ることになったのだった。


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