異星終焉史

胡蝶

 改めてみると随分大きな星だなと思ったし、随分発展したものだなと思った。

 技術は地球の比ではなく、建物のデザインなども先鋭的だ。日本人の建築センスは最悪だったが、異星人はそうでもないらしい。どの国も独自の感性を遺憾なく発揮していて、見るだけでも飽きのこない造りとなっている。トゥトゥーラ以外は。


 しかしそれももう見納め。星の寿命がやってきたのだ。

 小さな地響きが次第に大きくなっていき、海は干上がり、また、高波をつくってく。呑み込まれた大地があれば割れた大地もある。いずれにせよ、命は死んでいき、文明が消え、築いてきたものが潰えていった。


 人々は逃げ惑ったり叫んだり泣いたり笑ったり狂ったりしていたが皆死んでいった。ただ無慈悲に、無遠慮に、無選択に、無秩序に、片っ端から死んでいった。その様子を見ていると、俺はこの星のために何をしてきたのかと考えてしまう。動植物を発生させ、進化を促し、思いのまま自由にさせてきたのだが、その結果として幾度もの争いが起こり、悲しみが絶える事はなかった。

 

 そんな世界を作りたかったのかと問われれば勿論違うと答える。しかし、そうなってしまった事実は変えられず、弁明もできない。結局俺は神として異星に住む人間達に幸福を与えられず、滅びるまで彼らを眺めているだけしかできなかった。そのためにどれだけの罪悪感を抱いたか知らないし、後悔したかもしれない。そしてそれは異星が崩壊しても、きっと続く事だろう。それこそが贖罪であり、俺の背負った命への責任でもある。自己満足かもしれないが。


 



 一瞬、無音となる。直後に空の色が変色し、極光のような、虹のような眩きが広がっていった。それは蝶の羽ばたきのようで、夢の覚め始めのようで、深い眠りに就く前のようでもあった。



 異星が、終わる。終わっていく。光と共に。闇と共に。

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