ドーガとリャンバ

歴史映像録 第十七回 

 ミツの処刑についてリャンバでは一切が秘匿されたが、それでも人の口に蓋をする事は適わず、首都トゥーラではミツが死んだとの噂が立ち所に広まり、当時リャンバを治めるキシトアは、とうとう会見を開かざるを得なくなった。これはその時の実際の映像である。






「ミツ様がリャンバで処刑されたというのは本当ですか?」


「知らん。巡業に出るとは聞いている」


「行方不明となった当日、ユピトリウスの馬車に乗っていたとの目撃情報がありますが」


「どこのどいつが言ったんだそれは。嘘だったらそいつこそ処刑にしてやる」


「あくまで無関係だと?」


「だから知らん。だいたい馬車くらい来るだろ。断絶してるわけでもない」


「我が国にユピトリウスの馬車が入国するのは問題なのでは?」


「何が問題か。かつてこの国に馬車で移民してきた人間は大勢いるだろう」


「今と昔とじゃ時代が違うじゃないですか」


「そんなものはユピトリウスに言ってくれ。車の営業をしても買わんのだあいつら」


「今後ガーデニティはどうなるのでしょうか」


「さてね。個人の信仰は自由だが、今後など、それこそ神のみぞ知るといったところではないかね」







 キシトアはのらりくらりと質問を躱し記者達をなんとかやり込める事ができた。


 彼が真実を語らないのは、数日後にドーガの国主、ムカームとの会談を控えていたからとされている。当時のドーガは外海の国々へと進軍しその支配圏を着実に広めていた。キシトアは、その内の一つにリャンバが入らない保証はないと考えていたのかもしれない。隙を見せれば、侵略されると……

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る