文化的発展
エルフレッド・コーンコンサス著 街灯より抜粋
街行く老若男女見てみると「楽しいわ」「幸せだわ」という風に笑顔の花を咲かせております。戦後間もなくは陰鬱としていた街の通りでしたが、今は大変活気があり、これ平和といった様子で人々が生活を営んでいる姿を見ますと、何ともいえない叙情に耽ってしまい、時の流れを実感するのでした。
内乱の収束から三年を迎え、当時を知る人がポツポツと亡くなっているそうです。いわれてみれば追悼に訪れる足も減っている気がして、日に日に薄くなる争いの臭いに喜ぶべきか悲しむべきか、考える間に花が咲いては散っていき、散っては咲いていきます。
私はお酒を飲みますと、その内乱で死んだ父の記憶を辿り、もっと孝行をしてやればよかったと悔みながらも酔いを楽しんでいました。挙句友人の馬鹿な話にクスクスと笑い声を上げているものですから、父もまったく死に甲斐がなかったのではないかと思います。せめて涙ながらに思い出を語るくらいはしてやりたいのですが、これも性分ですので仕様がありません。
しかし世の中にはどうしたって不孝が尽きぬもので、私などには想像もつかぬ宿命を背負わされた人達もいるようでした。
「フェース人がまた殺されたってよ。まったく、野蛮だね」
友人の一言にギクリとしました。
普段世間知らずを通している私にも、フェースという国の人間がどのような扱いを受けているかは理解しているつもりでした。彼らは親やその親から敗戦の責を引き継ぎ艱難辛苦に喘いでいると聞いています。二代、三代、当代、次代と続いていく彼らの負の連鎖を考えると、自分のお気楽さ加減に忸怩たる念が湧き上がり、どうにも後ろめたく、犯してもいない悪さの罪悪感に囚われてしまうのです。
とはいえお酒を飲みますと陽気になるのですから、私はなんとも軽薄な性分でありましょうか。街の飲み屋でグラスを傾け、時に泣いたり、時に笑ったりするのです。上下で別けたのであれば間違いなく下。下衆に類するさもしい人間です。しかしどうしても止められないのは、酔っ払っていないといけない、退っ引きならない理由が私にあるからなのです。
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