第9話・一年生の能力値

「まさか本当に見つけてくるとはな」

「マジでいると思いませんでしたし」


 能力計測テストのため、着替えを待つ間に、監督と話ながら、一年生の能力が書かれたプリントを見ていた。

 最近知ったのだが、三原監督は森本たちを知っていたので先輩たちと勝負させたが、それ以外はじっくり育てるために勝負させるつもりは無かったらしい。

 つまり俺はとばっちりを受けたことになる。

 それはそれとして、身体能力テストを受けた結果が俺を含めた五人分記されていた。


 以下、5段階表記。

 数値は一年生であることを考慮してのもの。

 1が最も課題。

 2が中学平均かそれ以下。

 3がある程度練習についていけるレベル。

 4がベンチメンバーと試合になるレベル。

 5がレギュラーとやりあえるレベル。


 順に、基礎能力の筋力、短距離走、持久走。

 そして選手としての総合打撃力、(盗塁含め)走塁力、総合守備力。

 投手の俺は球速、制球力、変化球を計測した。


 ○菅原迅一、投手、右翼手。

 基礎能力・3、3、3。

 野手能力・2、1、3。

 投手能力・3、2、1。


「俺、投手力低いな」

「まだまだこれからさ。むしろ、弱小校出身というわりに、基礎能力がある程度あるじゃないか。それに、君は他の選手が喉から手が出るほど欲しがる素晴らしい武器を持ってるよ」

「武器?」

「森本から聞かなかったか? 球質だよ。あれは練習しても中々身に付くもんじゃない。付いても、元々持ってるやつには届かない素質だ。それを磨いていけば、君はてっぺん取れる投手になれる」

 監督の言葉には、未だにピンとこない。

「今はわからなくていい。練習を積み重ねていけってことだよ」


 続いて。

 森本京平、捕手。

 基礎能力・4、4、2。

 野手能力・5、3、4。


「分かってはいたけど、森本は高いですね」

「稀に見る天才捕手だ。強豪にも誘われていたみたいだが、どういうわけかうちの誘いを受けてくれた」

(そういえば何でアイツ、俺がここ来るって知ってたんだ?)


 郷田真紀、一塁手。

 基礎能力・5、2、4。

 野手能力・4、2、3。


「郷田も高い」

「森本と郷田の打力は即戦力だな。後は足を何とかすればベンチいや、夏にはレギュラーも狙えそうだ」


 島野勇、遊撃手、三塁手。

 基礎能力・2、5、1。

 野手能力・2、5、3。


「島野はパワーが課題か」

「足は目を見張るものがあるが、ここからどう育てるか、楽しみな選手だな」


 田浦修二、外野手。

 基礎能力・2、4、2。

 野手能力・3、3、5。


「田浦は守備がウリというだけありますね」

「あの守備範囲の広さには正直驚いた。後は肩を磨けば守備要員になれる」


「で、荒巻ですか」

「彼女の能力はまだ計測してないが、もしかしたら期待できるかもな」

「期待?」

「あれはかなり鍛えてる。下手すればそこらの男より上手いかもしれん」

「見ただけで分かるもんですか?」

「うむ。道具もかなり使い込まれ、手入れもされている。体の筋肉の付きも良い。あれは選手だ」


 監督と俺の目線は、テストを始めようとする荒巻の方に向く。

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