第8話・来たれ女子部員!

 入部届も無事に受理され、四月中頃。

 監督からの一声で、我々一年は学校を走り回ることとなる。

「来たれ野球部! 僕たちは君の挑戦を待っている! 女子も可!」

 これを永遠と言い続ける簡単なお仕事です。


「女子部員?」

「あぁ。女子の硬式野球部参加が正式に通達されたのは知ってるだろ」

 競技人口の減少及び、野球界の革新のため、ついに男女野球部が合併することが可能になった。

 これによって男女問わず、実力がある者がレギュラーを勝ち取り、甲子園を目指すこととなる。

「が、やはり最近のことだからな。まだまだ女子参加の敷居は高い。だから現役のお前達に勧誘してきてほしいのさ」

「野球部に参加したいなら自分から来ると思いますけどね」

「男女の身体能力差を中学までに感じてると、尚更プレイヤーになりたがる者は少ないだろうな。しかしウチのチームは猫の手も借りたい状況の戦力だ。少なくても良いからとりあえず広告だけでもしてきてほしい」

 そういうわけで、女子部員探しの旅に出る。

 ちなみにこのチーム、マジで外野に犬を置いたこともあるらしい。人間より上手かったこともあったとか。


「いねぇ!」

「普通校女子だとやっぱり厳しいか」

 俺と森本は階段でしゃがみこんでいた。

 余程のスポーツ高校にしか野球女子は入ってこないのだろう。

 今のところ女子はひっかかっていない。

 男子すらも。

「ねぇ」

「やっぱり見つからねぇよ」

「ねぇってば」

「どうしても競技として体力キツいイメージあるからな」

「ちょっと!」

「ぬぁ! ビックリした!」


 後ろから女子に声をかけられた。

 通路を通りたかったのか、申し訳ないと道を譲ろうとすると。

「入部したいんだけど、アタシ」

 ポクポクポク、チーン。

「なんて?」

「だから、入部したいの。野球部に、プレイヤーとして」


 四月中旬、見つけました、女子部員。

「アタシ、荒巻薫。ポジションはセカンドで右投げ右打ち。よろしく」


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