第2話・いざ野球部へ

 時は放課後、俺は例によって4人に包囲される。

「菅原。野球部行くよな?」

「行くけど、何、怖い」

「一緒に行こうぜ」

 俺と森本含めた5人で野球部の練習しているグラウンドに向かうこととなった。


 その道中、無言。居心地悪い。

 沈黙の3分間を乗り越え、野球部に到着した。

 グラウンドでは先輩たちが練習していた。


 その練習風景たるや、強豪のものだった。

 恐ろしい程の鋭いノック、強烈な打球、ハイペースなダッシュ。

 おかしいな。入るとこ違ったかしら。でも名簿に名前あったのよね。


「ようこそ、新入生」

 随分美人な女性に声をかけられた。

「あっ、こ、こんにちは」

 俺は言葉が詰まった挨拶をする。


「待っていたよ森本君、郷田君、島野君、田浦君。君達が来てくれて、うちのチームも心強いよ」

「お久しぶりです、三原監督。今日からお世話になります」

「監督だったのか……」

「そこの君も入部希望かな? 歓迎するとも」

「あ、菅原です。よろしくお願いします」

「よろしくね。さて。おーい! 集合!」

 三原監督なる人物が集合をかけると、先輩たちが練習を中断して集まってくる。


「入部希望者だ。自己紹介してもらうから聞いているように」

 いきなりかい、と戸惑っていると、森本から自己紹介が始まる。

「八代中出身、森本京平です。右投げ右打ちでポジションは捕手です。先輩方、1年でも遠慮なく上位打線狙うので、よろしくお願いします」

「同じく、郷田真紀です。左投げ左打ち、ポジションは一塁。強気で頑張りますんで、よろしゅう頼んます」

「島野勇、ショート、右投げ左打ちッス。足には自信がありますので、よろしくお願いしまッス」

「田浦修二です。外野やってました。右投げ両打ちです。この中じゃ地味な方ですけど守備が得意です。よろしくお願いします」


 4人が自己紹介を終え、全員の視線が俺に向く。

 郷田なんか、はよ言えや、と任侠世界でも通用しそうな視線を送ってくるので緊張はさらに大きくなった。

「えっと、秦野中出身、菅原迅一です。左投げ左打ち、投手やってました。さっきの4人に比べたら全然弱小ですけど、精一杯頑張りますので、よろしくお願いします」

 言い終わったらすぐに一歩下がる。

 前の4人の凄さが分かってるので、自分がここにいていいのかという疑問が心に残ってしまっていた。


 三原監督が先輩たちに声をかける。

「そんじゃあ、能力テストだ。1年諸君、道具を貸すから先輩たちと勝負してもらうよ」

 俺は、また肩に重荷がのった気がした。


「うちのエースと1人1打席勝負。そして菅原君と森本君はバッテリーを組んでキャプテンとも戦ってもらうよ」

 エースの国光さん、キャプテンの嶋さんとの対決。

 こんなに緊張することになるとは流石に思ってなかった。一応運動着持ってきておいて良かった。


 まず国光さんとの勝負。最初に打席に立つのは田浦。国光さんが右投げなので今回は左打席。

 ちなみに向こうはレギュラー陣が守備についている。

 一球目、真っ直ぐインハイ見逃し。

 二球目、スローカーブを引っかけファーストゴロ。


 続いて島野。

 一球目、外から入ってくるカーブ。

 二球目、インローストレート。

 三球目、フォークで空振り三振。


 郷田。

 一球目インコースへのストレートをライト前へ。詰まってはいたが流石のパワーで一二塁間を抜け、出塁した。


 そしていよいよ森本と俺の打席となる。

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