弱小、マウンドに上がる

下り坂

~1年夏

第1話・なんでコイツらが!?

 市大会二回戦、7回裏。金属バットの音が鳴り響き、誰もいないスタンドにボールが落ちる。

 こうして中学最後の大会で、俺の中学野球三年間は強豪校のバットの錆となって終わった。


 高校進学。ある意味人生の最初に訪れる分岐点。大学にせよ、高卒就職にせよ、ここでの選択は先の人生のビジョンを左右すると言っても過言ではない。

 しかし、弱小とはいえ野球に捧げてきた人生、当然現状高偏差値のとこに行く学力なんぞあるわけもなく、結局平均的な普通科高校に進むこととなる。それを告げたときの先生のあまりに予想通り、という表情ったらない。

 こうして普通に受験で合格。何事もなく進学することとなった。


 俺の進んだ高校は、特にスポーツが強いわけでも、難関大学に合格した実績が多いわけでもない。創立32年というなんとも言い難い学校。

 入学説明会を終えた翌週。入学式を終えいよいよクラス発表。男女比半々といった特に面白みもない名簿を横目に、教室へ向かう。

 このとき、クラスメイトを確認しておくべきだったのだ。そうしていれば、受け身がとれたかもしれないと思う。


 教室のドアを開ける。7割くらいの生徒が既に入っており、既に会話を広げている。

 座席表を確認し、着席する。右列真ん中の席というなんとも普通の席。

 こうして何でもない高校生活の幕開けかとボーッと考えていると、教室の前のドアが開き、4人の男たちが入ってきた。随分身体つきがしっかりしており、イケメン揃い。女子たちはざわめき始める。

 しかし、どっかで見た連中だなと思っていると、おそらくリーダー格であろう一人が話しかけてきた。

「はじめまして。いや、正しくは久しぶりかな?菅原迅一すがわらじんいちくん。俺のこと、覚えてる?」


 正直、こんなことがあるのかと目を疑った。忘れるはずもない。新聞の記事をデカデカと独占。いやそれ以前に、この男のバットで俺の中学野球は幕を閉じた。

 後ろにいる連中も、よく見りゃ知った顔だ。その男のチームメイトなんだから。

 県外の強豪校へ進んだのではないのか。何故地元に進学しているのか。色んな疑問はあるが、この瞬間は、この一言しか出なかった。

「なんでここに?」

 捕手、森本京平もりもときょうへい

 一塁手、郷田真紀ごうだまき

 遊撃手、島野勇しまのいさむ

 外野手、田浦修二たうらしゅうじ


 この4人との出会いが、俺の高校生活、野球人生を変える最大のものだった。


 これより、俺こと菅原迅一の野球人生、開幕である。

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