第129話  ウチのライブラリにあるの?

『111了解。――小隊各機、速度、フォーメーションそのまま。進路左+2』

『RB037コピー、ITSは不明機の確認を最優先。――CIC、不明機に接近する。当機のセンサートレースの優先度を上げて』


『CIC了解、037とのセンサー同調率、32%に上げ』

『通信長から関係各員。通信リソース変更、全体の17%を037とのデータ回線維持に回す』

『アイサー、通信リソース割り当てを変更。ブースター、リピーター、共に動作良好』


 姐さんの機体はルビィズ仕様でかつ、隊長用装備搭載型。

 索敵機器や通信機器はかなり強力な物が付いている。

 つまり、運用によっては索敵機みたいな使い方が出来る。

 CICの人達はその辺は良くわかってる。姐さんのひと言で通信の強度が、通常の数十倍にはね上がった。



『122よりコントロール、123とともにカタパルトセット完了、出撃準備待機に入る』

『コントロール了解、2小隊は即時発進待機の継続乞う』

『112コピー、スクランブル待機継続』


 2小隊が援護に来てくれる目はこれで無くなった。

 どころか、こっちが援護に回る必要性だってあるかもだ。

 だって、ナミブが堕ちたら俺が直接困る。当たり前と言えば当たり前。



「姐さん。戦闘機は良いけど、連邦の空を飛ぶBAなんてナミブウチ資料ライブラリにあるの?」

『あるわよ。アフリカでの目撃例が少ないだけで“スパロゥ”自体は実用化されて、もう量産に入ってるからね』


 連邦のBA、【TA002 スパロゥ】のデータがサブ画面に表示される。

 ゴツいアールブに比べて、だいぶ角が無くて丸みを帯びたデザインだけれど。

 この辺は多分見た目に違いはあっても、性能には関係無いんだろうな。


 軍の機械、とくにBAなんてデザイン一つから無駄な部分は一切無い。

 見た目の違いは方法論の違いだけ。


 612このきたいだって結果的に常識から外れた見た目ではあるけれど、それはあくまで性能を突き詰めた結果である。

 ……チーフが趣味で作ってる可能性が、完全には払しょく出来ないんだけど。



BAバトルアーマースパロゥ。……これで間違い無いっていう根拠は?」

『間違い無くスパロゥの系列機よ。理由は連邦には、002系列以外の空を飛ぶBAがないから。新規のテスト機があるとしても、連邦のBA開発は基本的にアメリカの軍団の開発局がやってるからね。新型機は全部アメリカ大陸のはず』


「で、既存の分は何でアフリカに入ってこないの?」

『それは簡単、アメリカが“忙しい”から。……アフリカ自体は現状維持にしておきたいのよ。もともと北アフリカ条約連合やら新アフリカ共和国連邦やらと“仲直り”出来たわけでも無いしね』



 地球連邦成立時の世界政府統合事変の時に、地球上で最後まで抵抗したのはアフリカ大陸。

 今でも連邦と仲が良いわけではない。


『その辺は実は、新協和政府としてもそこまで状況は変わらないんだけど、ね』


 あとから来た新共和だって、人口の大きい街は完全な統治下に置かないで、あえて自治領。という名前で自由裁量を残してあるくらい。

 しかも。激戦区とは言えないまでも、半年単位で連邦領と新共和領の線引きが変わる。


 めんどくさいから現状維持。

 というのは、いい加減に見えて実はわりと良い解決策だったりするのかも知れない。

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