第123話 それはそうだろうさ
砂漠の中の岩山のまわりにできた街、グランドロック。
1週間、という予定だったがここまで結局11日かかった。
もっとも、遅れた理由はナミブの不調だけが原因ではないけれど。
「ここから2列に並んでください!」
「ケガをしている方、お子様連れの方はこちらへ!」
二つある左舷のハッチが両方開放され、難民の人たちがナミブから街へと降りていき、自警団の制服がその列をさばいていく。
街の入り口までは500m以上はありそう。
怪我をしてる人とか小さな子供を連れた人は結構大変そうだ。
さすがに歩けない人は、点滅灯を屋根に付けた自警団のトラックに乗せてるようだけれど。……荷台でも歩くよりマシか。
ナミブが【入港】できる。とオペレーターのお姉さんは言ったが、まぁ要は街の入り口に横付けできる。程度の意味だったらしい。
思い出すと、ウォータークラウンだって真横に停まってただけだしな。
「任務、お疲れ様でありますっ!」
「あ、いえその、ごくろうさまです」
自警団の人たちが俺を見るたびに手を止めて、姿勢を正して敬礼をする。
こちらも当然、返さなくちゃいけないんだけど。
手伝うためにここにいるのに、なんか邪魔してる気がしてきた。
っていうか、作業の邪魔になってるだろ。これ。
ルビィズのエンブレムと、装飾の仕様がちょっとだけ違う制服。
さすがに自警団が見ればわかるよな。
ここの自警団の団長さんは大尉、俺の階級章は士官だし。となると俺よりエライ人はそれこそ数えるくらいしか居ない。当然と言えば当然なんだよ。
エライ人に好んで嫌われようなんて人は居ないからね。
そう思ってみてみると、ナミブ側でも下士官以上はみんな実作業にはでてないや。
邪魔になるのは本意じゃないので、ここは素直に本来の立ち位置。“保護者”の近所にいこうか。
「……ところで艦長。ウルトラテルミットと四種混合反応弾の二重構造弾頭なんて、何処で手に入れたんです?」
「特佐、何の話かね? ……意味が、わからんな。……そんなことより。アールブの残骸の件は調べてくれたかね?」
「粉々バラバラなうえ、装甲さえ。機体のほとんど全てがファーストインパクトの時点で溶け落ちて判別不能。もちろん報告書には書きません」
「なにしろ先日の件もある、アールブとなったら大ごとを通り越す。とはいえアフリカタワー奪取直後は機体数を揃えるためにニコイチ、サンコイチなど普通だったがな」
「多分、廃棄機体からの再生ノウハウが漏れていたんでしょうね。さすがにアレを方面軍が作った、なんて言ったらチーフに怒られます」
「再生機は全て、事後に
一段高いところに陣取ったナミブの幹部達と赤い服二人。
姐さんの後ろに回ったところ、それはそれでその場に居たくないような話が聞こえてきた。
ドコに居れば良いんだよ……。
「それはそうと、話を戻しますが。旧時代のニュークリア弾頭で無ければ良い、と言う訳では無いのでは?」
「もちろんそれはそうだろうさ。わかってる」
旧時代の超兵器。
その場の人間を環境ごと大規模に破壊する兵器だというのは知ってる。
そしてその技術は既に失われて久しい。BAなんかよりも技術のハードルは低いのだと聞いているが、今のところ“再発明”の噂はない。
「アレについては私に義務があるわけでも無いので、何処かに報告するわけでは無いですがSB-60。いえ、63Caですよね? 実際撃ったヤツは。そうだとすれば、ミサイル本体だってユーロ方面軍に配備になったばかりですよ?」
「時速12,000キロが見えたのか、たいしたもんだな」
「距離が短くて、最高速とは言い難かったですが」
「それでも計算上9,000キロ以上だぞ? 目が良いどころの話じゃ無いな」
「そう言う意味なら一応、物理的には見えましたよ? ……その。艦長からどう見えてるか、知りませんし興味もないですが。私も一応、ルビィズ。ですからね?」
目で実物を見ただけでは無く、情報にも全部あたった。と言うことだな。
艦長はむしろそれを聞いて肩の力を抜いて、やれやれ。と言う顔をする」
「当然、色々あったうえでの話。ってこった……」
司令とローラはあきらかに聞こえないフリをしてるし、艦長も司令の方は絶対に見ない。
迂闊にエラくなるのも考えものだな……。
俺に関していれば、銃殺刑になる可能性はあっても、エラくなる見込みゼロだから心配しなくて良いと部分だけど。
「
「その辺のことは実際にナミブに乗ってから気が付きました。だからこそ雑談なわけですが」
「特佐が理解のあるルビィズで助かるよ」
姐さんの立ち位置は本局から来た、特技専の監察官みたいな感じだものな。
艦長の感想、半分は本気なんだろうな。
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