第112話 なにを見ていたっ!

「This kid has nothing! what thinking you!!」

 どこに話したらいいのかわかんないので、とりあえず。表示を変えたモニターに向かって話す。

 ――子供狙うとか! 何考えてんだ、お前っ!

 話しかけるべきは本当はランパス本体なんだろうけど。

 少なくても銃口を向けるべき相手は彼じゃないはずだ。


「Answer me! ……now!!」

 文法が間違ってようが言いたいことは通じたはず、ならば答えろ!

 単純な自衛目的でこんなことするわけがない。

 実際には壊れたっていい。くらいに思ってるのはなんとなく知ってる。

 だったら、おまえの意図はどこだ? 答えろ、ランパス!


【I am not aiming at him. It is behind him..】

「彼の、後ろ?」


 後ろを振り返ると少年の後ろ、男性が拘束され、何か大きなものがゴロン、と床に落ちる。


「……グレネードの弾頭、だと? ――ボディチェック! なにを見ていたっ! この場の全員、両手を頭にのせて膝をつけっ! けが人も子供も全員だっ!!」

「艦長、あまり手荒な……」

「アレが格納庫で爆発すれば燃料、弾薬に延焼して爆発炎上、我が艦もその時点で轟沈。司令はそれでいいとでも!?」

「いや、もちろん良くはないが……」


「司令。ボクの立場からこのような発言は越権行為にあたるかもしれないが、ナミブも軍の船であることは疑いようがない。これはさすがに緩み過ぎなのでは? それともその責は艦長にあるということですか?


「特尉。もちろん責任は俺と司令の、両方だ。――間違いを指摘している以上は、貴官の言動は越権行為には当たらない。むしろ感謝する、……すまない」


 苦虫をかみつぶしたような、などという表現があると聞いた。

 艦長は俺がそれを思い出すような、そういう顔をして。

 キチンと気を付けの姿勢になると、ローラに敬礼して見せる。



 メカチーフと、その隣で一応ライフルを構えるサレさんの前に、取り上げられた銃やナイフが次々集まってくる。

「メカチーフ。ボディチェックはともかく、何故生体スキャンを抜けられたのでしょう?」


「サレ曹長なら、表面見りゃあわかんだろ! 生体欺瞞シートだ。民間人だと思ってセキュアレベルCで身体検査をスキャンしたな? ……武装の可能性ありなら最低B+、と技術の教科書にさえ書いてあんだろうがっ!」


「その指示を出したのは私だ、チーフ。……責任は完全に私にある」

「はい、いいえ! 司令は民間人の対感情にできる限り気を使っておられた。責任とすれば、スキャンデータを鵜呑みにし、ボディチェックで気が付かなかった我ら陸戦隊であります!」


 そういえば前にも、同じデータでも自分は”経験値“の違いがあるから結論が違うことがある。

 とはランパスが自分で言ってたな。

 スキャンのデータを見て危険物持ってるのを見抜いたのか。

 ……でも。



「あー、えーと。……Why teach it?」

 知らんぷり、しててもよかったんじゃないの?


【It is minimum self-defense measures.】

 最低限の自衛措置、ね。

 動けるくせに知らんぷりしやがって、いやな奴。


「なら、もういいだろ? ……cannon、でいいのか? ええと、Move to normal position..」

【Yes, sir.】

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