第111話 そう言えばいいだろっ!
「おい、艦長!」
「イエッサ―! 艦長からブリッジ、フェーズ4を宣言! ハンガーを艦内全区画より緊急隔離! チーフ、一番ハッチを至急開放しろ! 全開だ!!
」
【コンディションフェーズ4が発令されました、乗員各員は速やかに……】
遠くの方からガシャン、バタンという音が、うなりを上げ始める低いモーターの音に重なって聞こえる
「ハッチ一番の開放開始、全開まで115秒!」
【1番ハンガーから全艦内通路のドア、隔壁閉鎖、ロック完了。通行には艦長の許可が必要です】
「ローラ、あなたがパニック発生と判断した場合、実弾発砲を許可する。たとえ乗組員であっても容赦はするな。状況収拾を最優先とせよ……!」
それを聞いたローラは、眉一つ動かさずにホルスターから銃をつかみ出すと、ごく自然にセイフティを解除する。
「イエス・マム」
ハンガーの中、通常は整備状況や出撃の順番、装備の確認などを映すモニターが結構あって。
【誘導に従ってください】
【気分の悪い方は手をあげて知らせてください】
【お子様連れの方は黄色い床のエリア ↓ に集まってください】
などの難民の誘導に使っているもの以外にはすべて、
【GAC002 ナミブ へようこそ】
【新協和地上軍 ユーロ方面軍】
【新協和地上軍 アフリカ方面軍】
このどれかの文字と、新協和防衛軍のマークが出ていたが、いきなり全部のモニターが、いろんな角度からハンガー内を映すモニターに切り替わる。
ただランダムに映したわけではなさそうで、どのモニターにも黄色で輪郭を強調された人間がいる。全部で10人くらい?
――ガコっ!
ランパスから結構大きな金属音が響き、固定が外れたビームライフルが旋回すると、10歳前後の少年を正面から狙う。
何か考えるよりも早く体が動いた。
そんな話は何度か聞いたことがあったが、自分の体が動くのは初めてだった。
両手を大きく広げて少年の前、ビームライフルの筒先の正面に立つ。
……打たれれば俺ごと蒸発しておしまい。こんなの、なんの意味もない。
頭ではわかってるんだけど。
「なんのつもりだ! 気に要らないならわかりやすく、そう言えばいいだろっ!」
俺の正面のモニターがブラックアウトして白い文字が表示される。
【detected the presence of a weapon and took warning and intimidation measures.】
ランパスは自分が世界標準語を話せることは隠し通すつもりか。
マシンインタフェイス言語なら、確かにイメージは機械っぽく見えるだろうが。
それはともかく。
書いてあることが。
「武器を、持ち込まれた……?」
その文字を見たローラが、拳銃をかまえつつ指揮ブロックから飛び降り、走り出しながら叫ぶ。
「特務官権限においてハーベイ特務少尉が命じる! この場の総員、モニターで識別された全員を即刻取り押さえろっ!」
自分も近所にいた青年の腕を後ろからねじり上げながらローラ。
こういう時はやはりローラの動きが一番早い。
約一〇名は次々ライフルを突き付けられ、床にたたきつけられて腕をねじられる。
彼らの懐を探ると、拳銃やナイフがでてきた。
「状況がわからん、無力化と拘束をいそげ! 左三番格納スペース前に二人回れ!」
「武器を持ち込んだのは悪いが、交戦の意思はないとみる。あまり乱暴にはしないようにな」
いつの間にか司令と艦長の前にも陸戦隊が二人、アサルトライフルを腰だめに構えて戦闘態勢で立っている。
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