第108話 もう一つ理解ができない
ブリッジ最上段の真ん中。一段高い艦長席では艦長が仏頂面。
司令も腕組みで艦長席の横、姐さんと並んで立っている。
「司令! ハーベイ特務少尉他一名、出頭しました!」
「ご苦労。艦長から状況を説明する」
「……ラギ、黒き砂塵の旅団。覚えてるよな?」
覚えてるも何も。あの傭兵団のせいで、612はなし崩しで実戦投入されることになったんだ。
ついでにいえばあの時のセブンスは俺が、明確に俺の意思で中のパイロットごと撃墜したわけで。
もちろん、忘れるわけがない
それにデザートピークの市長や、自警団長の大尉さんだって、彼らのせいで大変な目に合っている。
あの二人に関していえば、こないだだって。自殺覚悟でナミブに交渉に来た。
いまだに尾を引いてる、ともいえるわけだ。
「もちろん忘れてないですが」
「同じ組織名を名乗る一、二〇〇名ほどの集団が、この先約25,000の位置に確認された。このままの速度なら当艦とはあと、6,300秒弱で接触予定だ」
「一、二〇〇人……。大丈夫なんですか? それ」
「ボクの合流前に、ランパス奪取に動いた傭兵団でしたね? 艦長、敵の兵装は? 今回は何か特殊兵装を持っているのか、特定はできていますか?」
「持っているとすれば白旗だな。――以降は私が説明しよう」
司令はそこまで怒ってる感じでは無いけれど、姐さんはちょっと不機嫌そうだな。
何がどうなってるんだろう。
「前回の襲撃の後、こちらでもそれなりに調べた。砂塵の旅団という組織は、武力こそ持っているが、そもそもは傭兵団ではないのだ」
「傭兵団では、ない?」
「新協和がタワーを奪取し、アフリカの状況が一変したあとに組織された、難民互助組織のようなモノでね」
「……どうしてそのような組織が武装しているのか、ボクにはもう一つ理解ができない」
「要するに我々新協和にはもちろん、連邦にも組しない、と決めた集団だ。窃盗団やら強盗も普通にいるだろうからな。武装自体は好ましくはないが、自衛手段はおのずと必要になるだろう」
連邦政府からの援助を断り、新共和の自治領の括りも良しとしなかった人たち。
組織の名前なんか知らないが、そういう人たちが一定数居るのは知ってる。
新共和、連邦両政府からの支援は受けらないのは、なにも居住地や食糧だけでは無い。
新共和進出後のアフリカ、特に両者の国境沿いでは結構な割合で武装集団に遭遇する。
その自衛手段も自分で持たなければたち行かない、そういうことだ。
その手の人たちは、
その彼らが白旗を掲げて近づいている?
『301からコントロール。難民集団を目視で確認、カメラの簡易カウントで1,205人を確認。データ、送る』
「コントロール了解、迎撃の可能性に備え、高度、速度は現状を維持しつつ周囲の索敵を継続せよ」
『イエッサー、周囲の索敵を継続する。301、いったん終わる』
「では司令。前回、この船が襲われたというのは?」
「先ほど通信で話した限りでは、組織を離れたもの達であり、組織名は騙りである。との話だったが」
「無線で話せたんですか?」
「私も意外だったが、ごく友好的だったよ」
「まさか、そのまま信じちゃったわけでは……」
「如何に私がヌルかろうとそこまでうかつでは無い。無いのだが……」
「ラギもあんまり虐めてやるな。……アフリカ方面軍から司令に指示が来たんだよ。接触して必要なら支援せよ。とな」
いくらでも住人との対感情を良くしよう、と言うのはエライ人たちも思ってるようで。
とは言え、RD収拾のためなら手段を選ばない特技専、そしてそこに所属する陸上空母ナミブは見ただけで威圧されるくらいバカでかい。
アフリカに住んでて新共和を良く思わないなら、どう考えても逆効果しかない気が……。
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