第102話 敵部隊完全沈黙
そのマルチスティック仕様を作った本人。
ナーバス強度を何事も無くあげて。専用機、RB037を回していた用に見えた姐さんだったが。
実際には機体から降りた直後から頭痛や吐き気に襲われ、目眩の上に目もピントが合わず、手足も震えて大変だったようだ。
その後
そんな人が、一般的なナーバス接続上限値を遙かに超えて実戦まで複数回、やっちゃってる。
そう言われたら、確かにただで済む方がおかしかった。
但し。かなり強度の高い“人体実験”ができてしまったので、見直すべき設定やデータは早々に洗い出された。
つまり現状のデフォルト上限値を上乗せできる可能性がほぼ確定した。
俺のデータも何かの役に立ったんだろうか……。
――明後日、センパイのシミュレーターと同条件で乗せてもらうことにしたのだ。
――同条件って、マルチスティック+ナーバス20.3%ってこと?
――ナーバスはあと2%弱の上乗せができることが確認できている。
――なんで嬉しそうなんだよ。
という経緯をたどり、複数回のテストの上。
現状、ローラの041もマルチスティックになっている。
一応、037と違って元に戻せる様にモジュール化してあるそうだけど。
もしも標準化、などと言うことになったら、BAの歴史を揺るがす一大事なのだとも聞いた。
でもまぁ。今のところ、特殊な操作系の、扱いにくいだけの機体でしかない。
そんな状況下でキャサワリィとBA戦なんて。
相手のデータもないし、パイロットもエース級。
「1小隊到着まで時間稼いでっ!」
『残念ながら、そんなに簡単な相手では、……ないようだ!』
「コントロールオペ4です。CIC、1小隊はまだですか!?」
『1小隊、現着まであと二〇秒』
……ダメだ!
一応ここに座る前。勉強の意味もあって、いろんな資料にあたったけれど。
エース同士のBA戦は、なにしろ
極端に長引く場合も多々あるが、基本的に秒で決まる時が多い。
そうだとしたら、間に合わない!
『041よりコントロール、キャサワリィを撃墜。敵部隊完全沈黙。……但し当機もひじから下の左腕と右の翼を根元から失った、変形、自力での広域移動不能。回収乞う』
連戦を切り抜けた上に、スペシャルな機体とやり合って一部損傷で済む?
やっぱりコイツはレベルが違いすぎる、頭がオカシイとしか。
「その、間もなく1小隊が……」
「変わってクレセント。ローラ、ライフルの保持はできている?」
『左マニュピレータ-以外は無事です、機能的な問題、ありません』
「了解。では、1小隊到着後、回収の段取りに入る。そのまま周囲警戒しつつ待機せよ」
『イエス・マム! 041は警戒待機に入る』
「では、そのように。コントロールからは以上」
『041、通信終わり』
「……とまぁ、こんなもんで良いんじゃないか? 特佐も良いな? ――よろしい。艦長より全艦、シミュレーター2番による全体演習を終了する!」
艦長の声がブリッジ全体に響く。
マイクに向かって話してるはずだけど、結構広いブリッジ全体に声が響く。
こういう時はエライ人、イカにも高級士官。と言う感じではある。
普段の、雑なおじさん、のイメージは感じない。
「各部署の責任者は、一二時間以内に俺にデータとレポートを提出するように、艦長からは以上だ!」
艦長の宣言が終わった瞬間から、ブリッジも無線もいきなりざわめき始める。
「演習終了に伴い、コンディションをフェーズ2からフェーズ0に変更します。関係各部署は……」
「コントロールから格納庫、シミュレーター2番の可動を修了して下さい」
『格納庫からCICシライ、データはどこに転送する? それと……』
「BA中隊長、至急ブリッジの艦長まで連絡を。なお……」
『技術小隊技官は全員、中央演算室に集合してください。繰り返します……』
『シミュレーターからデータの転送、格納を最優先! データの検証は技術に投げる!』
『主計科長より当番兵、食堂は11:40よりオープンとする。直ちに食堂に集合!』
艦長の宣言で、とりあえずいつものナミブに戻った。
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