第101話 地上型の天敵

『CICからコントロール4、ターミガンは二機とも現地改修型砂漠仕様、不明機はTT9057-FST、キャサワリィの可能性87%。パイロットへ機体情報、送る』


 空を飛べない連邦のアールブ、と言われるターミガン。

 それをさらにカリカリにチューンナップした頭のオカシイ機体、キャサワリィ。

 俺の612と同じく機動力アップのみに重点を置き、変形後の作戦行動時間はターミガンのほぼ1/3、という極端なBAだ。


 はっきり言えば、アールブの開発成功であからさまに押された連邦アメリカ軍団が、対BAモードのアールブ戦だけを念頭において作った機体である。

 但し、612と違うのは準量産機である部分。二〇機以上が実戦に投入されている。


 そうはいっても、実際に動かせるパイロットは極一握りで、半分は本当の意味で動かせるだけ。と言われるろくでもない機体。

 だからこそ戦場に出て来るキャサワリィは強い。

 名前だって、オストリッチダチョウターミガンライチョウと来てキャサワリィヒクイドリ。やたら強そうだ。


 手元に回ってきたデータでは、これまで確認された21機は例外なくすべて。

 連邦地上軍アメリカ軍団第三管区、要は中央アメリカ付近の所属らしい、とあって。

 それがなんだって今、この場で。


「なんで、キャサワリィなんて……」

「オペレーター、ぼさっとしない!」

「イエス・マム! ……CIC、情報の転送よろしく。――041、不明機はキャサワリィの可能性が高い。アフリカ方面軍は実機データを持っていない、できうる限り交戦はさけろ!」


『ありがとうコントロール、データも来てる。但しちょっと忙しくなるので応えられない。……くっ、口頭での、追加の、情報があれば、そのまま、読み上げて、くれ!』


「主要武装はアールブⅡ同等、レーザーガンとレーザースピア、BA形態では7rとほぼ同等の機動性がある。南アメリカ方面軍ではアールブe2ちじょうがたの天敵と言われてるそうだ。スキがあるなら空に上がった方が良い!」


 対アールブを念頭に置いた機体と格闘戦をするから悪いのであって、空中に上がれば被弾率とすれば俄然有利になる。

 1小隊も援護に向かっているわけだし。

 


『やはり空に逃がしてはくれないようだし、ターミガンも片付けた。……地上でケリを付ける!』


 ……は? 今なんつった?

 交戦開始エンゲージから30秒で、ターミガン二機を。……片付けた?




 なんだかローラについては今回、ハンデばかりなのだが。

 自分で勝手に重くした分のハンデもある。

 先日、格納庫で機体チェックをしていた時。


 ――RB037のマルチスティック、使えるなら悪くないな。

 ――マジで言ってんの? それ。

 ――メカチーフに仕事中にふざけてはいかんと言われたぞ。

 ――本人に艦内放送ボリュームマックスで言い返してやれ!


 あんたが言うんじゃねぇ! っていう話だ。

 612おれのきたいの惨状を見ろ! アレがふざけてないとでも……!?


 ――そもそも、ふざけたことなど無いというのに。

 お前も引っかかる場所が違う!

 

 ――まぁ、その件はあとで聞いてくれ。

 あ。さすがにそれについては、思うところはあったのね……。


 ――真面目な話、片手が空くならとても良い話だ。

 ――話は理解できるけどさ。

 ――何かのスイッチを余計に一回叩けるなら、それで楽になる状況もある。


 レバー2本、ペダル5本、スイッチ多数。次々切替ながら動かす機械。それが現状のBAである。

 ローラのクラスなら。左手が空けば何か間違うと、戦闘中だろうと簡単なプログラムくらいは書きそうにさえ見える。


 ――ナーバスの設定もお前と先輩のお陰で見直す部分がわかったようだし。

 ――俺はなにもしてないよ……。

 ――データの被検体というのは結構大変だと聞くが。


 基本的には、612のテストフライトしかしてないからなぁ。

 具体的に何が大変なのかは、聞かれてもちょっと。

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