第72話 居場所なんかないのよ?
『112から612、きちんと教える時間がなかったのに、編隊維持からフォーメーションの変更まで、良くついてきてるな」
「
員数外だからこそ、ナミブBA隊の基本戦術やフォーメーションは頭に入れておけ。と言われている。
どこに組み込まれても、即座に機能するのが優秀な人間の最低条件だ。という非常に実行の難しい注釈付きで。
姐さんあたりはほかの部隊に突っ込まれるのが普通だから、そういう運用が普通なんだろうけれど。
なので一応、俺も一般的なフォーメーションはもちろん。ナミブのBAチームがどう動くのか。
パイロット個々人が、なにが得意でどう動きたい人なのか、覚えた。
アニュアルは丸暗記するくらい読み込んで実機、シミュレーション含めてBA中隊全員の動きを全力で見て覚えた。
無線を聞くだけで状況がシミュレート出来るくらいに、エンジン音で機体の違いがわかるくらいに聞いた。
「普通に教えてもらった方が早くない?」
と、聞いたところ
「特技専は地上軍の精鋭部隊、キミは仮にも特務隊預かり。言いたいこと、わかる? 疑問点がわかりません。なんて言っちゃうヤツに居場所なんかないのよ? 見聞きして覚えて考えて。その上で疑問があったら、自分の言葉でカヌテ中尉やサロン大尉に聞きなさい。いいわね?」
脳筋なだけでなく、職人気質のおっさんみたいなことを言いだしたんだけど。
……17歳の女の子、だったよな。この人。
だから必死で覚えた。
この後に及んで居場所はない、なんて言われるのは困るからだ。
この点。何故だか部隊のエース、カヌテ中尉が何かと気をまわして面倒を見てくれるので助かっている。
姐さんや艦長ほどではないにしろ、彼の発言は絶対。みたいなところがあるからね。
中尉お気に入りの
俺の立場ってやたらに微妙なんだよ……。
一般人が操縦できないはずのアールブを、練習無しで乗り回しちゃってるしね。
「期待以上だ、凄いヤツだなお前は……。引き続き我に続け、以上」
「612コピー、引き続き追随します」
そして何がどこまでできるのか。
それは受け入れる側だって知りたいだろう。
中尉の反応からすると、必要な技能は持っている。と、判断されたようだ。とりあえず一安心。
『111から全機、目標を視認、フォーメーションチェンジ。分隊に分かれる』
『イエッサ―、112コピー、フォーメーションチェンジ』
四機編成だった編隊が二機ずつに分かれる。
『一分隊は上空警戒待機、二分隊、……カヌテ、ロスマンズ両名は変形して下へ』
『イエッサー、113上空待機』
『112コピー、ロスマンズとともに下に降ります』
新協和のマークがついた、BAがそのまま歩いて入れる様な巨大なコンテナ。
その前に降り立ってコンテナを見上げる。
コンテナの上、頭部のとさかみたいなブレードアンテナがないのと、人間の目にあたるバイザーのデザインが少し違う以外。RB037とほぼ同じ真っ赤な機体。
こうして見ると、
それが、装甲はところどころ擦り傷だらけで、左の手首から煙を上げ、銃身こそ下がっているけどレーザーライフルを即時射撃体勢で抱えて立っていた。
胸に書かれた機体ナンバーはRB041、肩にはルビィズのマーク。
間違いなくルビィズの機体だ。
『前方の地上型アールブ。こちらは防衛局長直属、RB041です。応答乞う』
女、しかも結構若い?
ありえない作戦にゴリゴリ突っ込んで宇宙から降りてくる。
と聞いてたので、ごついおっさんのイメージだったけど。
唐突な無線からの問いかけにたいして、中尉がよどみなく答える。
『こちらは特技専の強襲艦、GAC002ナミブ飛行中隊第一小隊ES112、地上軍中尉のカヌテ、他三名であります!』
中尉の言葉に合わせて隣の機体が敬礼をする。
バカみたいだ、と思わないでもないけれど。こういう時は見た目だって大事だ。とは姐さんも言ってた。
だから612にも敬礼をさせる。だけでなく俺もコクピットで敬礼をする。
ルビィズ預かりの身の上としては誰が来ようと上官。
見た目だけでなく、気持ちだって大事だ。
『特務隊ルビィズ、アウローラ・ハーベイ特務少尉です。出迎え、感謝します』
紅い機体がライフルを左手に持ち替え、敬礼をするのと同時。
通信画面が開いて、ブルーメタリックに輝くバイザーで顔は見えないけれど、紅いパイロットスーツが敬礼していた。
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少し早いですが『SSV!』、年内の投稿はこれで最後とします、
年明けは第三月曜からの再開を予定しております。
読者の皆さんには忘れずに待っていてもらえたら、と思います。
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