第70話 私はやったこと無いわよ?

『CICから関係各部署、データから目標は大気圏突入に成功、減速装置は支障がないものとして、以降の落着位置と時間の計算を完了、位置を送る。確認乞う』

『111、落着予想座標了解』

『索敵2からコントロール、ナミブ座標一時方向、落下する物体を目視で確認』


 もう落ちて来た?

 聞いてた予定よりも三時間以上早い。


 送られてきた場所も、当初とはだいぶ違うけど。

 でも最初にCICが送って来た計算では、インド洋にバラバラになって落ちるはずだった荷物。

 それはどうやら、再計算の結果、たった数十キロズレただけで砂漠に降りる。

 落ちるのでは無く、予定通りに降りる。




「えーと、限定パーソネルライン復旧。――037どうぞ」

『ふむ。まぁでも、ロープで引っ張ってきた、と言えなくは無いのか……』

「どう言うこと?」


『コンテナがそのまま、制御無しで落ちたらインド洋の真ん中にドボンだった、って。さっきデータ回ったでしょ?』

「つまり誰かが一緒に、コンテナを守りつつ制御しながら降りてくるってこと?」



 観測班や索敵班が落ちてくる荷物を完全に捉えたようだ。

 一気に関連の会話やデータが増える。


『対象物を目視で捉えた。バリュート展開状況良好、減速噴射装置が断続的に動作している』

『111の発進完了を確認。112発進許可、出ました。ユーハブ』

『対象がドラッグシュート放出、展開。続いてメインパラシュートも引き出された』

『113からコントロール、カタパルト発進位置についた』

『パラシュート展開成功、損傷無し。速度、一気に落ちます』

『CIC了解、実データで再計算。落着まであと約三〇〇秒を見込む』



 落下に入る前に角度が狂ってしまった場合。

 普通は、かなりデカい荷物でも原形を留めずに燃えてしまうらしい。


 荷物にBAバトルアーマーで張り付いて、『手動』で角度を制御する。

 理論的には出来るけれど、ほんの1度。角度が狂うと機体ごと燃え尽きる。

 本当はアールブだって、移動形態に変型して自分の角度を最適に保持し続けないと、燃えてしまうからだ。


 コンテナを干渉物に使いつつ、自前のブースターで角度と位置を調整して速度を制御し、ズレた落着位置を修整する。

 それを実際にやれる“だろう”、と思われる人は姐さん含めてごくわずか。


『もちろん、私はやったこと無いわよ?』

「地球自体が初めて、ですもんね」


 実際にやったことある人なんか片手に足りる、とは小隊長ねえさんが言ってたが。


ルビィズあかでも、普通なら諦める。そんな事はしない、とだけ言っておくわ』

「……なんか含みのある言い方なんだけれども、それは」


 ――来たかったんでしょうね、地球に。無線の向こうでため息。


『突発事故ではあるけれど、降りてしまえばあがるのも大変。ただじゃ無いし。……なので、ずっと要請してた私の応援任務にそのままつくようだし』

「誰が来たのか、だいたいわかった。……みたいな?」


『ま、そんなトコ。037はアウト。――チーフ、新型アールブタイプ7rが来る。私のRB037きたいの予備部品の全数を検品開始。なお……』


 アールブⅡでも最新鋭機のタイプ7。ルビィズ以外でも配備はされてるはず。

 無茶をするならそれを預けられたエースパイロットだからタイプ7さいしんえいき、と言うところまではわかるけど。


 でもなんの情報も報告も無しに、タイプ7でもルビィズの専用機、r型が来た。とねえさんは断じた。

 つまり。彼女の読みでは、来るのはエリート部隊ルビィズの誰か。だということだ


 態度からすると知り合いっぽいけれど。

 

 彼女の場合、階級はともかく年齢から行くとルビィズみうちは、ほぼ全員センパイなわけで。

 そう言う人が任務を引き継ぐわけじゃなく、補佐に入る。とか。

 うん、だから途中から言い方がめんどくさそうだったのかな。

 自分で言うよりよほど人間くさいんだよ、あの人ねえさん

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