第69話 なにしろ、広いからね

 今やってた訓練も、メカチーフには艦長から、――船が止まらなくて良いなら。と言う条件を出されてた。

 そこまでして、いったいどこへ向かっていたのかといえば。



 数日前。

 ――“荷物”は本国が運べと要請してるのだし、ルビィズだって居るのだし。

 と、司令が開き直って部品を宇宙そらの防衛局に直接頼んだ。


 政府の直接命令を遂行中で、ルビィズも同行している部隊。

 そこからの要請は簡単に受理され、たった三日で部品調達は完了。

 但し、輸送手段にアフリカタワーの軌道エレベーターを使うことはできなかった。

 だから荷物を落とす。と約束されたところに、無理やり向かっていたわけだ。


 ここでスクランブルがかかる、つまり。

 落ちてくる荷物の予定が早まった。と言う事なんだろうけど。

 ただ、敵に襲われた?



「敵襲? 宇宙そらで?」


 劣勢と言われながら、地上の結構な範囲を支配下に置いているイメージ、いや実際においてる新共和なんだけれど。



 中身は今居る砂漠やら、平地のほぼ無い山岳地帯やら、ジャングルやら。

 そう言う不毛な大地が支配下地域全体の七割を占める。


 支配下地域がほぼ砂漠、とは言え。世界に4基しかない軌道エレベーターのあるアフリカ大陸中部は、だからかなりの重要地域なのだ。


 もう一つの南米のエレベーターはジャングルに囲まれてるわけで。

 なんか劣勢だというのは、その辺だけ見ても良くわかる。


 とは言え、新共和の本拠地は考えなくても宇宙そらのうえ

 宇宙なら圧勝なんじゃ無いの?

 なんて、思ってたんだけど、



宇宙そらは新共和の本拠地ホーム、じゃないの?」



『コロニーやらステーションの近所ならともかく、物量で劣る新共和軍は宇宙にあってもイメージ程優位、と言うわけでもないのよ。……なにしろ、広いからね』


 ――まぁ砂漠なんかより、よほど広いよね。宇宙って。



「今回に関しては、特に低軌道上で資材投下位置の最終調整をしてる時に敵襲。なんて、状況は有り得ないくらいに最悪』


「そんなにリスクがあるんだ」


『本拠地から遠い、低軌道上では母艦も墜落の恐れがあるから近寄れない。腕が無いと制御出来なくなるから大部隊は送れない。情報妨害用の人工衛星のせいで各種センサーの効きが悪い、……姿勢制御だけでも気を使うのに、さらになにかを制御して投下する。と言うなら尚のこと……』


『……! 中尉からコールです、ちょっと待って下さい』



『……りかえす、ES112からCP612』

『あ、はい。612、ロスマンズです。カヌテ中尉、どうぞ』

『実検は現時を持って終了だ、急なシフト変更で悪いな。――間もなく自分もあがるが、アバテ中尉の113が出るまでは高度を維持、旋回しつつ現状待機。特佐の許可は出ているそうだから、その後は一小隊の指揮下、具体的には自分の指揮に従え。良いな?』


「コピー。実験は現時を持って終了、以降は中尉に従います」

『ちょっとだけ待っててくれ。113があがり次第、すぐに連絡する。112、カヌテはいったんアウト』


 状況はともかく、実験が終わるのは良い事だよ……。

 ――って、訓練じゃ無くて、書類上も実験の扱いだったんじゃ無いか!

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