第67話 スクランブル要請!

『ま、出来たんだから良いじゃねぇか。……今度は二番に逆向きで頼む』


 なんでそんなに離着艦のデータが必要になって……。

 あ、設計ソフトの演算ではそもそも着艦できなかった、……って言ってましたよね。そう言えば。


「まだやるんですか……。あぁ、いえ。従うんでしたよね。――612、コピー。予定高度到達。左に180度回頭の後、再度着艦体勢に入る」

『コントロール確認、CP612は規定高度到達後、アプローチ開始予定時間まで上空待機』


「イエッサー」

 予定時間、と言うと長そうだけど。

 予定高度到達から二七秒後開始。としか表示が出てない。



 普段細長いイメージのナミブだが、両側の甲板を展開してるので、上から見ると四角く見える。横幅が最大で約2.8倍になるんだそうだ。

 真ん中にブリッジがあるのは、この形態だけみると無駄にしか見えないな……。

 あんな重たそうなのに、良く普通に走ってるな……。



《マスター、ランパスです。先ほどはお見事でした》

「お前に褒められてもな……」

《実際、操作に介入しする予定でしたが、横風からの挙動の乱れを読み切って上手く制御しました。お見事、と言うしか無い状況です》


 実際の話、上手く行きすぎたのでたぶんランパスが介入してきたんだと思っていた。

 この機体ならリモートでも動かせる、とは昨日聞いたばかりだ。


《ところでアプローチに入るのは7秒延ばして下さい》

「なんかかあったの?」


 今日は疑似体アバターは無し、音声だけで割り込んできたな。



 CP612このきたいに乗っている限りは、会話をしても大丈夫だ。

 先日訓練中に突然、通信モニターの上に現れたランパス“本人”にそう言われた、

 完全にナミブとこの機体を把握してしまったらしい。

 俺に悪いことは無さそうだけど、良い事なのかどうなのか。



《すぐに部隊司令から連絡が入ります》

「……司令が? 俺に?」


 最近は、スペンサー司令と直接話す機会はあまり無い。

 特技専の一番エライ人と余ってる人、その辺は当然なんだけど。


《直接、と言うなら齟齬があるかも知れませんが》

「なんだそりゃ?」



『ダメージコントロールから至急! 機関部27ブロックで火災発生!』

『こちら消防班、27ブロックに急行します!』』

『二番メイン系統バルブ緊急遮断! 緊急バイパスA系統全解放』

『間に合いません、バイパス経路圧力危険域! 250%を越えます!』


 ナミブの後方、三番エレベーターと離着陸床のさらに後ろ側、エンジン吸気用の金網が突然、白い煙を吐き始めたと思ったら、火花を吹き上げて煙は真っ黒に変わる。

 それでも止まること無く、黒い煙を引きつつナミブは走り続けるが、もともと遅かった速度はさらに落ちる。



『全艦、全部署に通達、現時を持ってコンディションが1に変更されました。ブリッジ、CIC要員は配置を確認、周囲警戒せよ。繰り返します、コンディション1が発令されました』


「コントロール! 612です、なにが……」

『CP612は待て。――待機中のBA1小隊サロン小隊長に緊急。小隊全機にスクランブル要請!』

『イエッサー。――1小隊、全機スクランブル!』


 艦内火災については元から、と言ったらおかしいけれど。

 ある程度は織り込み済みだったはず。

 なんで走行用の機関暴走で緊急発進スクランブルかかるの!?



『コントロールよりCP612へ緊急。アプローチは中止、現在高度を維持しそのまま上空待機せよ』

「……? その、612コピー、高度維持したまま上空待機します」

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