第47話 ロスマンズ特務士長、パイロットです

 ずらっと並んだ自警団。迷彩服のトンネルをくぐり、ほぼ歩くことも無くクルマに乗せられ。

 駐屯地から車で一〇分ちょっと、行政本庁舎。と言う建物に行って、スーツを着て、きちんと髪をなでつけた自治領行政長官、と言う人にあった。


 連邦より、なんて言われてるから結構冷たくされるもんだと思ってたけど。

 もの凄く歓待された。なんて意外な。

 特務隊ルビィズはただの特殊部隊じゃないからなぁ。直接関わらないだけで政治家から見るとかなり地位の高い存在。



 新共和の自治領に、ユーロやアフリカの方面軍を飛ばして本局のエリートルビィズが頭を下げに来る。となれば。


 ――この機を上手く捉まえて利用できたら、直接の支援が増える可能性だってあるから、結構歓待されるぞ。


 とは、出掛けにも改めて艦長が言ってたけどさ。

 世の中って結構、イヤらしいものが組み合わさってできてるんだね。

 

 その後、またクルマに乗せられ、今度は駐屯地に戻って一番大きな建物へ。



 建物の一番奥、いかにもエライ人の部屋に通されると、以外と若い人が直立不動で待っていた。

「わざわざこんなところまで、特務隊の方に出向いて頂けるとは思いませんでした。――自分は当自治区、自警団団長のエルダー大尉であります」



 改めて見ると新共和防衛軍とは敬礼がちょっと違うんだな。

 肩に、大尉を示す新共和オレたちとは違う形の階級章。


 いつもの自警団の制服、迷彩服だけど、なんか違う。エラい人用?

 歳は30中盤前後? 特技専ウチの艦長と同じくらいかな。

 まぁ、あの人はそもそも老けて見えるんおっさんがおだけど。

 それでも、なんか思ってたよりだいぶ若い。



「こちらこそ忙しい処、時間を取らせて申し訳ありません、団長閣下。――特務隊ルビィズ所属。今は特技専、独立戦術航空隊のクレセント特務少佐です。こちらは同じくルビィズのロスマンズ特務士長。パイロットです」

 そう言って貰えないと、見た目は腕章以外エリート部隊っぽいところ無いもんな、俺。


「ロスマンズ特務士長です!」

 気をつけから敬礼する。

「団長の役を頂いているとは言え、所詮しょせんは田舎自警団ですよ。……お二方とも、自分に気遣いなどは不要であります」


「団長の立場がそこまで軽いとも思いませんが、お言葉には甘えることとしましょう。――特士、なおれ。……団長閣下の御厚意に甘えましょう。楽にしてよし」

 休め。のカタチも決して楽だとは思わないが、気をつけのままよりマシか。


「お二人とも、気にせずこちらにお座りを。……まずは仕事の話を済ましてしまいましょう」

「では、遠慮せずにありがたく。……特士もこちらへ」

「……はいっ!」


 こんな立派な応接セットに座るのも初めてだけど、せっかくフカフカなのに背筋を伸ばして浅く座るのか。

 ――これは落ち着かない……。


 


「……本作戦は、新共和全体に関わる一大事。快くご協力を頂き感謝致します。団長」

「そのような案件に関わることが出来て光栄であります。――既にスペンサー司令より頂いた要求書の物資については、昼前より搬送を開始しております。あと30分弱で第一陣が船の方に到着する旨、連絡が来ております」


「お借りした部品や機材は、約二週間前後で補給が完了できるよう司令が手はずを整えています。私の方からも重ねて要請しておりますので……」



 実務レベルの協議。

 なんて言葉はニュースで聞いたことがあるが。

 多分こう言うことなんだろうな。

 応接テーブルに広げられた書類を確かめながら、姐さんと団長が次々サインをしていく。

 自警団は仮想ペーパーでなくてホンモノの紙、だな。


 仕事自体は、ほんの10分ちょっとで終わった。

 あとで聞いたところ、――特に何かを決めるわけで無し。初めからやること決まってるからね。とは言っていたが。

 ――要は話し合って決めた、と言う証拠を残したいだけだからさ。

 とも言ってたけれど。大人の世界は難しい。



「このあと、時間があるなら夕食などどうでしょうか。と市長が言っておられるのですが……」

「親睦を深めるのは、個人的にやぶさかでは無いのですが、日暮れまでには帰ってこい。と司令から言われておりまして。……ただちょっと。せっかく大きな街なので寄り道を、とは思っていますが」


「……寄り道、でありますか?」

「えぇ、ここ半年。まともに休んだことが無かったもので……」

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