第45話 声は腹から出す
「でも。アフリカに関係無い私が、支援要請に行く。と?」
「制服組でもトップ。本局付きの
ウォータークラウンも自治領の一つだが、新共和政府とはかなり仲が良い。
だから水管理システムとか農業実験都市とかも作ってもらった、と言う背景もある。
現状、自治領扱いになっている地域は九つくらいあって……。
と言う教科書丸暗記の知識はともかく。
いくらスピードが出ないとは言え、あれからだいぶ走ったし。
とっくにウォータークラウンの管轄じゃ無いはず。
この辺はあまり新共和政府とは仲が良くない地域。
と言うか、連邦より。と言っても良いくらいなはず。
だったら新共和の中枢に近いルビィズの制服が行くより、地上軍のエライ人である司令の方が良いのでは?
「そう言うのこそ、司令本来の仕事なのでは?」
そして。姐さんさえもそう思う、と。
「建て前はそうだが。……特佐から見てあの司令が、そう言う任務に向いていると思うかね?」
「いえ、ぜんぜん」
……俺からみたって。むかないよね司令は。そう言うの。
「……あー、なんだ。おほん。そう言うことだから、頼まれてくれないかね?」
いきなり司令席の後ろの扉が開くと、
「艦長、特佐とロスマンズ君を大至急呼んでくれ」
司令がそう言い終わると同時に姐さんが、姿勢を正すと敬礼して。
――痛で! すね、蹴られた。
……そうだった。姐さんが敬礼したら、気をつけ。
無条件で、そうならないといけないんだった。
「クレセント特務少佐、並びにロスマンズ准尉相当。出頭しております」
「さっき自分で呼出かけたじゃねぇですか、特佐はさっきから待ってます。
「うむ、それどころでは無い。
「話の相手って、
「……まさか私に、直接話す機会があるとは自分でも驚きだ」
――ついっ。と仮想ペーパーが艦長の前に飛んでくる。
使いこなしてるなぁ、司令。
「ロスマンズ君は、その通達を持って先々週に遡り。アフリカ方面軍技術科が雇用を決定、准七級技士として特技専に配属。その上でパイロット候補生としてルビィズに“又貸し”することが決まった。またルビィズへの異動に伴い一時的措置として階級を特務士長とする。これで相当ではなく、正規の准尉相当官だ」
「……! 軍属扱いでは無くラギ君に特務隊の階級を? ――あの方はいったい、なにを考えて……」
「話している間、腹の中を見透かされているようで、生きた心地がしなかったよ。――色々、バレてるようにも思えてならないが。……いずれ以降も私のできる範囲で続けて話はする。特佐の方でも、引き続き手を回してくれ」
「あの人に駆け引きを仕掛けるのは、それは無謀な気がします。――言われなくとも私だって、各方面への根回し、継続はします。ですが私はともかく、……司令はかえって、痛くも無い腹を探られることになるのでは?」
「さすがに探られて痛む腹が無い、とは言わんがね。……しかし、軍規はともかく。ロスマンズ君を巻き込んでしまった我々の責任は重い、と。特佐は、そう思わないかね?」
「……もちろん。そこは司令のおっしゃる通り、ですが」
空気が重くなりかけたところで艦長が割って入ってくる。
「……と言うことでだ。クレセント特佐、並びにロスマンズ特士。部品が無けりゃ、まもなく二番と五番のエンジンがご臨終で我々は立ち往生。……顔出しは頼んだぜ?」
「気乗りはしませんが、了解です。――ラギ君? 敬礼は、こう。……良い? とりあえず当面、私が敬礼したらキミもする、声は腹から出す。いいね?」
「あぁ、おほん、では改めて。……特務隊両名にあっては、明朝自治領中央政庁、並びに自警団駐屯地本部まで赴き、司令の書簡を届けられたい。状況開始は明日0930を予定。両名にあっては時間までにブリッジへ出頭せよ。詳細は後ほど。以上!」
「イエッサー! コピー。クレセント、並びにロスマンズは自治領中央政庁、自警団双方に書簡を届けます」
姐さんの背筋がスッと伸びて、かかとが――コツ。と音を立てて合わさる。
敬礼一つでも、やたらカッコいいな。……本物、か。
「い、イエッサー!」
「イチゴーサンフタ、ナミブ艦長、マッカーシー少佐がクレセント特佐の命令受領を確認した。……司令?」
「あぁ、艦長。すまないな、……よろしく頼む、特佐」
艦長はそれを聞くと、左耳にヘッドセットを当て自分の席のコンソールを操作する。
「ブリッジの艦長だ、メカチーフを出せ。――あぁ、マッカーシーだ。パイロットはクレセント特佐とラギで301を出す、準備を始めろ。――そうだ、今日じゃない。急がないが、明日の昼前に出られるようにしてくれ。なお……」
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