第15話 ニンフ・ランパス

「AI! どうして起動したのかは今は良いわ。この機体は、……“あなた”は。 ――“冥界のニンフ・妖精ランパス ” で良いのね?」

《はい。当機の個体識別は VMZ999F "Lampás" です》


「まさか本物の“妖精達ニュンペー”が戦闘ステイタスで起動するなんて! ――ラギ君、聞いて! 敵の狙いはこの機体そのもの! 絶対に足をやられたらダメよ!」

「……そんな事いわれても」


「コクピットから引き摺り出されて撲殺されたいの? その前には当然。男も女も関係無く犯されちゃうわよ!」

 俺も犯される対象に入ってるのか。……マジで!?

「そんな極端な……」


「私。今、ブラしか付けてないんだよ! ほぼ確定じゃん!! そんなの絶対ずぇええったい、イヤだからねっ!! ――ランパス! 飛行モードに変形、絶対距離をとって!」


《変型のタイミングが取れません、距離200を維持されてしまっています。形態の切換時を狙われます。ターミガンのレーザー射撃効果距離は推定1200。距離は最大でも500で限界》

「……くそ、ダメか!」


「え、それってダメなんすか? おい、カタチだけでも逃げらんないのか?」

《射撃効果距離からの離脱は不可能。飛行モードへ変型スプリットタイムは最短、約0.7秒、加速までさらに1.2秒必要ですが、計算上、その間で3.7発の致命的な被弾が予想されます》



「……! ちょっと待ったラギ君。――こちらクレセント、ナミブなの? 取れてる? ――良かった、繋がった! CIC、状況は?」



「飛んでも撃たれるだけ……? なら、船の裏側に回ったらどうだ? 変型しなくてもジャンプでブースターふかせばいけるだろ?」

《可能です》

「ならそれで一旦、仕切り直して……」



「街側に展開できたアールブは三機なのね? ――オストリッチが五機も……? ――こちらは12番の“荷物”が起動、連邦のオストリッチ、ターミガン。都合2機とエンゲージ。オストリッチは撃破、ターミガンとは現在も交戦継続中」



「五機ぃ!? ヤメヤメ! 裏に行くのは中止! やっぱここでやるしか無い! どこを狙う!? 燃料タンクとエンジンはダメだ、また爆発する!!」

《命令受領。コクピットと思われる位置をマーク》


 ……コクピットって、マジかよ!


「いや、その。他にどっか弱点的なものはねぇの?」

《外観、動作の特徴から再度、解析を開始》 



「どうやって撃破したか? ――うーん。現状詳細の説明は困難。もう一度確認するけど、ターミガンをどうにかすればそちらも退く感じなのね?」



《ターミガンの保持する主武装はエネルギー外部依存型。エネルギーサプライコネクタは構造的に右マニュピレータ手のひらのみと推定》

「右腕もってけば、もうレーザーは撃てねぇ、ってことか!?」


《武装内部に、一時的に最大七〇〇秒前後、射撃四回分程度のエネルギーが残存する可能性を示唆》

「こっちが先に拾えば良いんだろ! 右手を狙う、いいな!?」


《右腕を詳細スキャン、……可動部分確認、マーク》

「右腕をもぎ取って退かせてやるっ!」

《収束率86%で準備完了、サイトロック。命中率19%》


「いけぇ!」

 トリガーを引いたタイミングは完璧だったはず。

 なのに、ビームはターミガンの肩の装甲に焦げ目をつけただけで、後ろへと抜ける。

 ――やっぱり俺は、確立二割を引くような、そんなヒキは持ってないらしい。



「そっちはアールブで支えきれてるのね。だったら問題はターミガン一機。――話はわかったけれど、……あ、やっぱ外れた。……えーと。こちらでどうこうするのは状況的に困難! 一機で良いからアールブ、こっちに回してぇ!」

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