第16話 引かないならば、今度こそは……!

「ちょろちょろとぉ! ならばっ!」

 残弾の無くなったライフルを投げ捨てる。


「……!? ちょっと! ラギ君、何する気っ!!」



「アクティブバリア、右手だけに目一杯集めて収束の上でパンチ! できるか!? ……できねぇ、つってもそのままぶん殴る!」

《可能ですが、右マニュピレーターは各機能が集中しており、論理回路組み替えに15秒必要》


「俺は右利きなんだよ! すぐやれ、行くぞっ!!」

 一気にターミガンに近づく。こちらのほうが早い上、さっきのマニィさんの話が本当なら、こちらを壊すわけには行かない。正面からは撃てないはず。



「BAでぶん殴るの前提なんて! そんな戦術、聞いたことない! ランパス! ソードは、スピアは! クラブもメイスも無いのっ!? クロゥとは言わない、フィンガーガード的なものもないのっ!? マニピュレータ自体は精密機器でしょっ!!」



《右下腕部にバリア集中、目標値314%。維持限界0.7秒。アクティブバリアレディ》

 目の前で姿勢を沈めて、一気に拳で肩を打ち抜くイメージ。

「帰れぇえ!!」

《バリアオン、オーバーブースト》


 ターミガンの肩のアーマーが撃墜マークごと歪んで吹き飛び、部品や破片が宙に舞う。

 レーザーライフルを持った右腕が、胴体から離れて地面に落ちる。

《ターミガン。右腕、肩関節部破損、右腕の脱落を確認》

《バリアオーバーブースト終了、最大値307%。右マニュピレータ、及び右腕部、損傷無し》


 右腕の落ちた前に回り込み、腕を拾うと放り投げる。

「なんかできんなら、やってみろ!!」


 落ちていたライフルを拾うと構える。さっきの話ならレーザーが数発撃てるはず。

「えぇと、制御系をオーバーライド! 、で良いのか? ……使える様になる?」


《制御システムに侵入成功。解析開始、掌握。使用制限ロック暗号キィ解析、ロック解除完了、制御系オーバーライド開始。……完了。制御掌握。射撃準備完了。……出力82%で残弾3、収束率可変域37~79%。設定55%で固定》

 専用では無いけど使えるんだ……。


「引かないならば、今度こそは……!」

 再度画面に現れたターゲットサイトが、コクピットだと思われる位置に重なる。


 俺の声が聞こえたかのように、片腕を失ったターミガンは後退していった。

《ターミガン1、交戦可能距離から離脱。本機より11:33方向、本機との相対距離現状513、速度58でなお拡大中》



「はぁ、はぁ……。やった、のか?」

「た、ターミガンの撤退を、確認…………。なんなの? なんなのこれ!」

「マニィさん、……腕は、大丈夫でした?」

「あ……。完全に忘れてた」


 絶対に忘れないでしょ! あんな大ケガ。

 但し、今になってもまだ。思い出さないようで。


「私のコマンドは口頭もキーボードも完全無視、って……。ランパス、あんたねぇ」

 マニィさんは全力で“ランパス”とケンカしていた。

 ……頑丈なのが取り柄、とは自分でも言ってたな、そう言えば。

 


【Since it is in battle mode, commands other than pilots are invalid.】

「なんでテキストぉ! ケンカ売ってるの!? せめて喋りなさいよ! なんなの、感じ悪い……!」

 Aiと本気でケンカする人を始めて見た……。

 ランパスが異常に高性能なのか、マニィさんの沸点が低いのか。どっちだろう。


「あの。ところでマニィさん、これからどうしたら……」

「そうだね、ちょっと待って。――こちらクレセント。ナミブCIC、取れてる? ――、オーケーCIC、状況報告。当方は戦闘終了、ターミガンを中破、撤退を確認。当機、並びにコンテナの損傷は軽微。なお……」 



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予告 


心ならずもランパスを起動して敵を撃退した俺。

褒められると思ってたのに、なんで……?

そして、マニィさん。……なんで俺!?


次回 第二章 マニィさんの左腕と真っ赤なアールブ


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次章まで本編は数週、お休みを頂きますが

来週は設定資料を投稿する予定です。

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