第13話 わからんがわかった!

「俺はなにをすれば良い!?」


《現状、自立制御下での武器の使用は正規のマスター承認無しのため不可。滑走距離三四二mですが増設ブースターのデータに誤りがないなら離脱、上昇は可能、直後に変型》


「俺が撃つ、てことか?」

《現状、自律制御での攻撃行動は禁止されています》

「攻撃……。俺にトリガーを引けってのかよ!?」


 ……二人でこのまま死ぬよりは良い、はずだ。

 俺はともかく、マニィさんは。

 この人は、こんな下らない死に方をしちゃいけない人だ。


 それに、俺はトリガーを引くだけ。

 そう思えば、それはそれでお手軽で良い。簡単じゃ無いか。



「なぁ、これ。銃身が機体中心から右にズレてる、ってこと?」

 足元に見える黒い筒みたいなのがそうだと思うんだけど。

 だいぶ右側にズレて付いている。


《その通りですが問題ありません、距離が近すぎるので可動範囲内での補正はできませんが計算上、破壊は確定。……以降未確認の敵性機体をボギー1と呼称》


 表示されていたデータ画面にさらにデータや画像が増え、画像にたくさんの矢印や注釈が加わる。


《砲撃と同時アクティブバリア100%で円形展開しつつ発進、飛散した構造体をそのまま突破、機首上げののち変型、完了後操縦権委譲、着地して下さい》


「今、着地を俺がやるって言わなかったか!?」

《バリア展開規模は機首を中心に半径3m、0.3秒》

 一気にエンジンの音が大きく甲高くなって、シートにも振動が響いてくる。


《“ナーヴァス”レディ》

「なにが使用可能になったって!?」

《外部エンジン1番2番、外部サブエンジン3番稼働良好、メインジェネレータ出力上昇、正常範囲内。降着装置の拘束を強制解除開始、完了。浮上開始、0.3mで固定。降着装置収納開始、完了》


「このままじゃ殺されるだけ。だったら、やってやるっ! 撃てば良いんだな!?」

《射撃と同時にオートマニューバで発進。“ナーヴァス"初回接続は調整未了のため変型後に限って精度最大72%で可能。以降は恒常的接続を保証、但し精度は未計算。エンジン臨界》

「わからんがわかった! やるぞ!」


《命令受領。発進、バリア展開をトリガーに同調。“ナーヴァス”コネクトスタンバイ。――緊急。オストリッチ1、再度射撃姿勢》

「いけぇ!!」


 トリガーを絞って足元が発光、外の景色が見えたのと一気にシートに押しつけられてそのまま上を向く。それら全てがほぼ同時だった。


《緊急ブースト終了、出力92%維持。仰角+82°ブースター偏向-12%。予定高度到達+12.4、変型完了、各部正常》


 上を向いたシートはいつの間にか通常の位置になり、空に浮いている。

《“ナーヴァス”、接続完了、動作良好。アシスト最大78%で再設定》 

 今まで飛行機のカタチの3面図を表示していた部分には、人型ロボットの3面図になっていた。


《着地に注意。耐ショック。着地以降操縦権を完全委譲》

「ホントに俺がやるのかよ!? どうやって動かすんだ、これ!!」


《全ての感覚や動作は自身の身体の延長と考えて下さい。ユーハブコントロール。――緊急。オストリッチ1、主武装照準、当機。速射系実体弾と推定》


 着地した瞬間、真横に飛ぶ。身体の……延長?

 ――! そう言うことか。なんかわかった!!


「アイハブ! させるか!」

 背後で爆発。


《敵弾三発、当機左側を最低3mで通過、後方±750、6:35~6:42に着弾、爆発3》

 音声が遅い? 言われたこと全部、俺にはリアルタイムでわかった。なんだこれ?

 ――いや、今はそんなことを言ってる場合じゃ無い!


「……二発しか無い! 弱点、どこだ!」

 一気にオストリッチの構造が解析され、燃料タンクと思われるところが赤くマーキングされて、サイトが遅れて重なる。


《収束率57%で射撃準備完了》

「悪いのは、……出て来たお前だぁあ!!」

《サイトロック、自動追尾。命中率92%》


 トリガーを引いた瞬間、右手に一瞬負荷がかかり、次の瞬間には、腹の部分に大穴を開けたオストリッチがゆっくりとたおれ。

 ――ドゴォーン! 爆発して手足がちぎれて吹き飛び、地面に大穴があく。

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