第12話 外に出られるか?
AIからバンバン報告が上がってくる。
――増設エンジンの制御系統の解析、オーバーライド完了。
――増設エンジンの稼働上限は現状維持で八百八十七秒、フルパワーで九十三秒。
――各機関へのエネルギー供給ライン構築完了、問題なし。
――メインジェネレータ出力、64%で安定。
――アクティブバリアは100%で二秒維持が二回可能。
――パッシブバリア機能正常、出力は未調整につき30%上限。
――飛行、変型、共に可能。増設機器も含め、機関各部動作に異常なし。
――追加装備による重量増23%。空力制御悪化32%。補正範囲内。
――増設機器の干渉確認、変型、関節可動共に干渉なし、可動域全てに支障なし。
ディズプレイの文字が読み切れない上、音声も重なって報告してくる。
わけわかんねぇよ!
なんかまともに動くことが出来そうではあるけれど。
なんか変な単語が聞こえた気が。
「飛行? 変型? どう言うことっ!?」
ただそれについては答えてはくれず、機体のコンディションの報告がよどみなくどんどん続く。
目の前に立ち上がった仮想ディスプレイ、飛行機らしきものの三面図。
空力とかは知らんけど、カタチから言ったら確かに頑張ったら飛びそう、ではある。
なんか、後ろに色違いでゴテゴテ付いてるのが増設ブースターとエンジン?
機首からちょっと下がったところが青くなって、赤い○が縦に二つ。
ここに乗ってるってことか。
変型ってなんだ? アールブみたいに飛行機からロボットにでもなるのか?
アールブは今の新共和軍を支える主力兵器、初期型から五年くらい経つけれど。
連邦もまだ、空を飛ぶ機体は作れていない。
でも待てよ。“こいつ"は旧世紀の遺跡から発掘した“出土品”だったはず。
だったら、アールブよりも高性能なのかも。
……って言うか、ホントに飛ぶのか? これ!?
――ともかく。
「残弾三、っつったな?コンテナの壁を吹っ飛ばして外に出られるか?」
《命令受領、計算中……完了。収束率6%で指示の場所を撃って下さい。直後フルオートで最大加速、現状から離脱》
「ライフルは俺が撃つってことか? ……変型ってなんだよ」
ただAIはそれには答えず。
《残存データからの推測では、コンテナ群確保のプライオリティが高いと推測。現状では任務遂行に支障有り。――安全のためこれよりレストレイントデバイスを展開、完了。稼働開始》
いきなりシートから生えてきたアームに全身ガッチリ固定される。
シートベルトなんて生やさしいモンじゃない、
――あ!
「ちょっと待て! 後ろにマニィさん、怪我人がっ!」
《固定は問題なく完了》
「問題なく。って、あのな……」
《損傷部に異常なし》
……当たり前だ!
《緊急。オストリッチ1、射撃姿勢。耐ショック》
「だからどうにもでき、……だっ!」
コンテナが大きく揺れ、コンテナ内部の照明がちらちら明滅。一部がそのまま付かなくなった。
《コンテナ外面に着弾三発を確認、当機にダメージ無し》
「ん、当機……? お前、この機体のAIだってのか!?」
音声はそれには答えず、淡々と状況を報告する。
《着弾は三発全て実体弾。コンテナ外装部やや上方に命中、外部モニター用カメラの画像に一部欠損。コンテナ形状に歪み発生、外装フレームに致命的な破断を確認。外板に亀裂が生じて気密が切れました。次弾一発命中で外板脱落の可能性87%、二発なら100%で破損、脱落》
状況はこっちの理解を待ってくれない。
動かせるのか? 俺に……。
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