第10話 状況がわかんねぇ!

「なぁ、乗せてはみたけど。この先、どうすんの?」

《状況から、そこに滞在するのは危険であると提言します。メインパイロット席に着席してください。座席をキャビン内に格納します》


「かえって危険じゃ無いか?」

《駆動系はまだ時間がかかりますが、制御系の起動はできています。キャビンの中は比較的安全だと推定》

「いつ起動したんだよ。それになんで安全だって言いきれんのさ。……いや。もういいや、俺の判断よりかは正確なんだろ? わかった、座れば良いのな?」

《シート格納を開始。手足のはさまれに注意》


 シートの乗った板は、真っ暗な機械の中に引き込まれる。

 完全に引き込まれる前に照明が付き、シートが固定されると足元にペダルが現れ、シートの肘掛けの位置に操縦桿のようなもの、そして正面にコンソールがセットされる。

 回りは完全に壁だけど、キャビンというかコクピットだな、これ。


 そのコンソールに文字列が走る。

【Sub engine startup completed. No abnormality in each part】

【Start proper value measurement of pilot and library verification】

【Preparing to start the main engine. Both fuel and propellant are 0%. Cannot start】

【No library registration, measurement of appropriate value continues】

 ……なんかこのフォント、読みづらい。

 その上ディスプレイに表示される文字はとてつもなく量が多く、次々新たな情報が表示されて読み切れない。

 文章も言い回しが微妙な気がして、それがまた読みづらい。



【Co-pilot seat, vital monitor-link system started. Start grasping status】

(コ・パイロットシート、バイタルモニタ-リンクシステム起動。状態把握開始)


「読むのが面倒臭い、喋れ!」

《バイタルモニタシステム起動に成功、動作試験完了を確認、動作良好。パイロット両名の状態把握を進行中》

「とりあえず、それは急いでくれ」

《イエッサー。搭乗者のバイタルチェック、プライオリティを最優先に変更》



【Processing of the coefficient of conformity of the person who appeared in the cockpit】

【Complete processing】

【Confirm conformance boarding】

(操縦席に搭乗した人物の適合係数の処理中 終了 適合者の搭乗を確認)



【Pilot, vital stability, all within standard value range】

【Co-pilot and vital detected anomaly and started re-measurement】


《パイロット、バイタル不適合総合判定F、全て標準値範囲内。コパイロット、バイタル不全、意識無し+5ポイント。瞳孔状態不明+5ポイント、呼吸数+4ポイント、血圧+3ポイント、脈拍+4ポイント、体温+2ポイント。総合判定B+。鎮静剤と解熱剤の投与を提案》

「どこにある!?」


《現在の搭載数0》

「なんなんだよ!」


 それ以降も文字が続々と表示され消えていく。

【Start each scan for height, weight, skeleton and muscles ... scan complete】

【Scan data registration and reflection. Start adjustment of seat and operation system】

【Co-pilot seat is canceled for both scanning and adjustment】

(身長、体重、骨格、筋肉の各スキャンを開始……スキャン完了)

(スキャンデータ登録、反映。シート、操作系の調整を開始)

(コ・パイロットシートはスキャン、調整とも中止)


「だから、喋れっての!」」

【Start scanning for fingerprint, palm print, vein, glow, retina, face, and voice print patterns】

【Complete, register pattern to bank】

(指紋、掌紋、静脈、光彩、網膜、顔、声紋の各パターンをスキャン、完了)

 モニターにはとんでもない速さで、次々情報が表示されては消えていく。

 読み切れねぇ!

 なんのために読めない量の情報を表示する!


【Judgment of serious danger imminent in life of co-pilot】

《コ・パイロットの生命維持危険度は重篤、かつ危険な状態であると判断し、六〇分以内に正規の医師による診断、治療を受けることを推奨》

「この状況下でどうしろってんだよ!」


【Starting lock release key addition processing】

【Processing completed, ready for boot】

(起動ロック解放キィ追加処理中 完了 起動準備完了)


「言葉で喋れ! 状況がわかんねぇ!!」

《“ナーヴァス”接続準備中のため、文字表示の他、必要な情報は随時音声アナウンスをしています。問題ありません》


「アナウンスの判断基準、大丈夫なんだろうな……?」

 その一〇倍以上の文字が流れてる気がするんだが。

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