ローレンツと鳥のように

 人間ペットは従順にできている。飼われる為に産み出された生き物なのだから当たり前と言えば当たり前だ。でなければ傍に居る事すら耐えられないオーナーも居るだろう。

 ところで私のオーナーであるところのタイキ君はとても優しい。美味しいご飯も暖かいお風呂もふかふかのベッドも、私にも全部同じものを与えてくれる。概ね私のペット人生は幸せと言っていいだろう。

 私は出張で家を空けがちなご両親に、タイキ君のお友達代わりとして飼われた。その頃上手く喋れなかったタイキ君は、十年経った今も上手く喋れていない。お手伝いさんと私しか居ない家。本当に出張で留守にしているのかなんて、ペットの私が考える事ではないんだけど。

「だめだよ、積み木なめちゃ」

 積み木を取り上げるとすかさずタイキ君が私の手を掴んだ。そのまま冷たい床に押し倒される。開けっ放しの口から涎が垂れ、頬に落ちる。仕方ないなと首に手を回すと、タイキ君は夢中で私のブラウスをたくし上げた。

 タイキ君は優しい。だって私は愛されているペットだから。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る