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そして現在に至るのだった。

周りは見知らぬ草原、目の前には熊のような怪物。

逃げなくちゃいけないのに、頭がついていかない。


「グルルォッ!」


怪物の巨体が飛びかかる。

凶悪な顔に命の危機を感じる。


「誰か……赤井っ!」


思わず目を閉じ、叫んだのはいつも俺を振り回す幼馴染。正義の味方の名前だった。



「氷将の盾!」


「焔閃牙!」


聞きなれない声に目を開けると、目の前には巨大な氷の盾。その先に炎に包まれる怪獣の姿があった。


「大丈夫か、少年」

「危ないところだったな」


声の先には一組の男女がいた。

女子の方は急に明後日の方を向き


「最初に読者にいっておくが私たちはいわゆる友情出演というやつだ。速水の出番はもうないっ!」

「急にメタ発言するのはやめろっ!鈴原!」


男子の方は切れ味のいいツッコミを入れる。


「ツッコミ役は二人も要らんからな。さあ楽しい遠足の続きだぞ★」

「遠足じゃなくて魔物退治だろ……ここら辺の魔物は俺達が退治したから安心してくれ!それじゃ!」


颯爽と駆け抜けていく二人。あまりの速さとテンポの良い掛け合いにさっきまでの恐怖心が消えていたことに気付いた。


「あの人達、仲いいんだな」


ふと顔を上げると近くに集落があることに気付いた。



「もしかしたら、みんなもこっちに来てるのかもしれない。とりあえず行ってみるか」


俺はゆっくりと足を動かしていく。


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