第5話⑤ サブリミナルでハゲモテドン! それは人を救うおまじない?
「手が、ひどい腱鞘炎になって鉛筆がもてなくなり、センター試験に失敗して浪人してしまったんだ」
「なんや! それ!」
「俺は浪人のときに東京に来た。それは、透明な手で女性の首を絞めすぎたため、
『そばに近づくと、息苦しくなる男』
と気味悪がられ、地元にいられなくなったからなんだ」
「そばに近づくと息苦しくなる男? それ、ちょっと意味が違う気がするけど…まあ、とにかく、それで、お兄ちゃん。東京にきたんか」
「うん。でも、入試は冬だろう」
「まあ、冬やな」
「風邪のやつは、毎年毎年、冬に流行るんだもん! 結局、女性の首を絞めすぎて、手の腱鞘炎がひどくなり、鉛筆がもてなくなって、二浪するはめになったんや」
「お兄ちゃんも、苦労してるやな」
「二浪の時、この狂気に打ち勝たない限り合格はないと、山にこもり、滝に打たれながら、
『南無妙法蓮華、南無妙法蓮華経』
と修行した。そして、修行のかいもあって、目の前で女子に鼻をかまれても…うーん…と首を絞めるのを我慢できるようなったんや! 」
「じゃあ、お兄ちゃん、二浪でやっと大学に合格したんやな」
「その年は修行ばかりで、勉強してなかったから落ちた…」
「そりゃあかんわ。勉強せんかったら、誰だって落ちるわ」
「結局、まともな学生生活に戻るのに三年かかった」
「三浪か…」
「大学生になってからも自分の中に潜む、女性への敵意をなんとか克服しようと、仏教研究会に入って4年間もがんばって修行してきたのに…また、もとに戻るなんて、くそ! 俺は、俺は、いったいなにをしていたんだろう」
うつむき肩を落とす恭平の背中に、アキの小さな手が触れた。
「お兄ちゃん、いくら意識の中で女性への敵意を消そうとしても無駄よ」
「どうして? 」
「だって、お兄ちゃんの女性への敵意は潜在意識にまで染みついているからよ」
「潜在意識…」
「そう、だから治ったようにみえても、今日みたいに女性にふられる…というショックを受けたら、すぐに元に戻ってしまうの」
「じゃあ、アキちゃん。僕はいったいどうすればいいんだ」
「ひとつだけ、方法があるわ…」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます