第3話② 都市伝説…バナナジン 

「あなたは、あの時の誓いを破ったのよ」

「だから、違うって言ってるのに」

「嘘までつくの。そんな人だったの。一度ぐらいのことなら謝ってくれたら許してあげたのに」

「だから、なにかの間違いだって」

「バナナ味のするタバコってあなた以外に誰が吸うの」

「だから違うって…」

「いいかげんしてよ! 」

 宏美は持っていた下着を恭平に投げつけた。

「見損なったわ。あなたは性格だけが取り柄の人なのに、そんな見え透いた嘘をつくなんて、もう、終わりね」

「終わりって…」

「別れましょう。部屋をでていって」

「そんな…」

「あなたが出ていかないなら、私が出て行くわ」

「宏美、僕を信じてくれ。お願いだから出ていくなんて」 玄関で、靴を履き替え出て行こうとする宏美の手を引き留めようと恭平がつかんだとき、

「離してよ! 」

 と、振り返った宏美は、なんと恭平の顔をまともに見てしまった。

「嫌やややややー! 」

 宏美、恭平を振りほどくと、うずくまって震えだした。「宏美…」

「近寄らないで! 」

「どうして? 」

「今だから言うけど、あなたの顔って全然私の好みじゃないの。見ただけでヘドが出そうなほど嫌なの」

「え! 」

「今まで性格がとてもいい人で、ご飯も準備してくれるし、気を使わなくて、すごく楽だから顔を見ないようにつき合っていたの」

「そんな」

「でも、見え透いた嘘を平気でつく人だったとは」

「だから、それは違うって」

「なにも言わないで」

「宏美」

「顔だけじゃなくて、性格まで嫌になったら、もうあなたと一緒に生活なんてできないわ…さようなら」

「宏美! 」

 部屋から出て行こうとする宏美を引き留めようと、また手をつかんだ恭平だった。

宏美は恭平を振り返ることもなく言い放った。

「離してよ。あんたみたいな魅力のない男が私を引き留められると思っているの!  」

「…」

「さようなら」

 言葉もなく、ただ立ち尽くす恭平だった…。

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