第3話① 都市伝説…バナナジン 

 昭和は若者がラジオ番組に熱狂した時代じゃった。そんな若者が熱狂した番組の一つに、音楽の選曲と、曲と曲の間のブラックコントで若者を虜にした『スネークマンショー』があった。特に話題になったブラックコントは、日本公演のため来日した元ビートルズのメンバー、ポールマッカートニーが成田空港で麻薬所持の現行犯で逮捕された事件のブラックコントであろう・・・そして、このブラックコントが話題になったとき、まことしやかに広がった都市伝説があった。それは『バナナの皮を干して粉状にしてタバコに入れて吸うと、ポールマッカートニーと同じ気分になれる』というもの・・・そのため、あっちこっちの店でバナナが売り切れるという現象さえ起こったとか、起こらなかったとか…



――回想シーン――

告白の次の日。二人は喫茶店で初めてのデートをした。

「ねえ、タバコ吸ってもいいかな」

「え? タバコ…」

 宏美は眉をしかめた。しかし、その表情に恭平は気がつかず、ポケットからタバコを取り出した。

「このタバコおもしろいんだよ。僕が加工したんだけどバナナの香りがするんだ。作り方はね、食べた後のバナナの皮をベランダで干して乾燥させ、粉末にしてタバコにいれるだけなんだ。このタバコのすごいところは香りだけじゃないんだ。バナナの味までするんだ。あとね、イチゴ味やメロン味っていうのもあるんだ…僕はタバコ作りだけが自慢なんだ。人はイチゴ味やバナナ味って子供用の歯磨きみたいで嫌だって言うんだけど、世界で一本しかないタバコを持っていると思うと、それだけでうれしくなるんだよね」

「私、タバコ嫌いなの。だからタバコを吸う人も嫌い」

「え…いや奇遇だね。実は僕もタバコが健康に悪いんで、そろそろ禁煙しようと思っていたところなんだ。こんなもの百害あって一利なしだもんね」

「本当に禁煙するの」

「山田恭平、命にかけて誓います。今日からいっさいタバコは吸わないと」

「命なんかかけていらないわ。そのかわり、もし一度でもタバコを吸ったら、私と別れてもらうわよ」

「別れるだなんて、そんな宏美さん」

「自信ないの」

「いいえ…」

「じゃあ、いいわね」

「はい…」

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