第1話② 恋愛相談、顔が嫌いな人と付き合えますか?
『つき合いはじめの頃は許容範囲かなと思ったのですが、会うたびに、あの顔を見せつけられると、彼の優しさに惹かれるのに反比例して、だんだん見るのも嫌になってきたんです』
ちょっと、きついわね。
『でも、あんなに心根の優しい、性格のいい人はいません』
ふんふん、なるほど。
『たぶん、彼と別れたらもう二度と、彼みたいな性格のいい人とは巡り会えないと思います。ああ、私はいったいどうしたらいいのでしょう。もし、宏美さんが私の立場だったらどうしますか。プロポーズを受けますか、断りますか。私の一生に関わる大問題なのでまじめに答えてください。よろしくお願いします。
PS リクエスト曲はスタンドバイミです。彼が好きな曲なんです』
ウーン…難しい問題ねえ。でも、なんだかんだ言って彼の好きな曲をリクエストするぐらいだから、ヨーコさん、彼のこと、好きなんだと思う。だから、彼のプロポーズを受けたらいいと思うわ。顔が好みじゃないって言うのなら…ずっと彼の顔を見ないですごす方法を実践すればいいのよ!
たとえばね、デートするときは、なるべく彼の顔が見えにくい夜にすればいいの。また、昼間会わないといけないときは、ずっとうつむいたり、まわりの風景ばかり見ていたらいいんじゃないかな。
あと、もし喫茶店なんかで、ずっとうつむいてて、彼になんか言われたら…私、少し対面恐怖症で、あなたの顔を見るが恥ずかしいの…て言えば、照れてるみたいでかわいく見えるから一石二鳥になると思うわ。
そうそう、もしヨーコさん、目が悪いんだったらデートの時、眼鏡やコンタクトをはずして会えば絶対にグウよ! 悪い目で見たら美的価値観も変わる。顔の好みなんて所詮そんなものよ。だからヨーコさん、心配なんかいらないわ。彼の胸に飛び込んでいくべきよ。
外国のことわざに、こういうのがあるの。えーと、たしか…女は愛する男と結婚するより、自分のことを愛してくれる男と結婚する方が幸せになれる…て。彼はあなたのこと愛してくれているのだから、きっと幸せになれるわ。がんばってね、ヨーコさん。じゃあ、リクエスト曲にいきます。スタンドバイミ」
スタンドバイミの曲が流れると宏美はハガキを静かに机の上に置いてマイクのスイッチを切った。すると、宏美のヘッドホーンに番組のディレクターの声が聞こえてきた。
「宏美ちゃん、今の回答すばらしかったよ。もしかして経験者だったりして?」
すると、宏美は慌てながら
「もう…違いますよ!」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます