第2話① 児童虐待は人生に大きな影を落とす

 コロナによる外出自粛の期間、児童虐待が問題になっているそうである…みんなイライラがたまって、そのはけ口として弱いモノに向かってしまうのだろう。実は人気の美人DJ宏美も、父親から虐待を受けた過去があって、それが彼女の人生に大きな影を落としていた…。

 

「ただいま」

 宏美がラジオ局から帰ってくると、洗濯物をたたんでいた宏美の同棲相手の山田恭平やまだきょうへいが立ち上がった。恭平は大阪出身で、すごく優しくて良い男なのだが、三浪で大学に入学したため、卒業後、なかなか正社員になれず、今は葬儀屋でバイトをしていた。

「おかえり、宏美。今日は早かったんだね。夕食は食べたの? 」

「まだよ」

「それはよかった。実は今日のお通夜の仕事で出たお弁当が余ってたので、君と食べようと思って、二つ取っておいたんだ。冷蔵庫、冷蔵庫…さあ、見て! ジャーン! なかなか豪勢なお弁当でね、海老の天ぷらまで入っているんだよ。久しぶりだな、海老の天ぷらなんて」

「いらないわよ」

「え! 」

「そんなお通夜の残りものみたいな辛気くさいものいらないわよ」

「辛気くさいなんて…クンクン…ちょっと線香臭いだけじゃないか」

「よけいにいらないわよ、そんなもの! 」

「でも、ごちそうだよ」

「いいこと、私はDJという仕事がら、喉には一番気を使っているのよ。それに小さい頃から喘息気味で、タバコとか線香といった煙のでるものは大嫌いなの。今でもタバコとか線香の臭いを嗅いだだけで咳がでるのよ」

「でも、宏美の実家てたしか、お寺だろ。ダバコは分かるけど、どうして線香が嫌なんだい。お寺の商売道具だろ」

「それを言わないで!」

「どうして? 」

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