第2話② 児童虐待は人生に大きな影を落とす

「今、一番売れているDJ,宏美の実家がお寺だなんて、イメージダウンもいいとこよ。せめて教会だったらどれだけよかったか」

「きょうかいってさ…ヘヘヘって悪い奴が子どもをさらっていくことだろう」

「それは誘拐」

「分かった! 総理が『自衛隊は合憲です』と言ったところ」

「それは国会」 

「運動会の時、ラインを引く白いやつ! 」

「それは石灰よ」

「ウウウ…わしはおまえの死んだおばあちゃんだよ」

「それは霊界」

「わあ、大変だ。台風で川の水があふれた」

「それは、それは、ええっと…決壊」

「ピンポン! 大正解」

「もう、いいかげんにして! 大阪のノリでのせないでよ、私、今、疲れているんだから…」

「ごめんね…あーあ、へんなこと言わなきゃよかった」

「ちなみに、それは後悔よ」

「おお、いい突っ込みだね。座布団一枚!」

「うるさい! 」

「すみません」

「いいこと、私はね、小僧さんもいない、窓を開けたらすぐ隣の窓という小さなお寺の一人娘だったの」

「ふんふん、それで」

「小さい頃から毎日毎日、朝のお勤めにお堂の拭き掃除。生まれつき喉が弱かったのに、窓を閉め切ったお堂で毎日、線香の煙やほこりに囲まれて、小学校にあがるころには、すっかり喘息になっていたわ」

「そんなの、窓を開けていれば喘息にならなかったんじゃないの」

「隣のおばさんがエコロジーや環境問題にうるさかったのよ! やれ、お経は騒音公害だ! 線香は大気汚染だと署名運動されて、窓を開けることができなかったの」

「かわいそうに」

「それだけじゃないのよ私の不幸は」

「まだ、あるの」

「こともあろうに父親の奴、男の子が家にいないからって言って、私を跡継ぎの坊さんにしようとしたの。尼さんじゃなくて坊さんよ」

「ぼうさんっていうのはヨーグルトにはいっている…」

「それは、乳酸、シャラップ!! 」

 宏美は床を思いっきり蹴って、恭平を黙らせた。

「シリヤスな場面なの。茶化さないで」

「すいません」

「忘れもしないわ、あれは小学5年生の夏休みのことだった・・・」

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