に
というのも、子供達がいちいち大きな声で驚いたりして派手に反応を見せるものだから、それにつられて他の客も寄ってきたのである。そのうち何人かは大工などが本職の人もいたらしい。その人達がまとめて買っていったおかげで、逆に子供達が
「いやぁ。よう売れたわ」
「おきゃくさん、たくさんかってくれてよかったね」
「そやなぁ」
後片付けを手伝っていると、通りのすぐそこの角から誰かが出てきた。
その誰かにいの一番に気づいたのは、周囲に目を配っていた厳太夫達であった。互いに隠れて背後で小突き合い、誰が一番先に声をかけるかで影で
すると、その様子に気づいた宗右衛門が顔をあげる。そちらを向いて、その誰か――こちらへとやってくる若い男の姿に気づいた。
「あっ! さこんせんせいだっ」
「えっ!?」
「ひゃあー! どうしよう、どうしよう!」
「しっ。おちついてっ」
他の子供達も気づき、慌てるのを宗右衛門が
「何でここにいるのかな?」
「えっとぉ」
唇に薄く笑みを浮かべている左近に、慌てて厳太夫が間に入る。
「あー! こいつら、俺達の買い物に付き合ってくれてたんです。最近、ほら、修理しなきゃいけないところも多かったから」
「そう」
「……え?」
てっきりいつものように標的を自分達に変え、質問攻めにしてくると思っていた。なのに、そうはならなかった。なまじ覚悟していただけに、厳太夫はとんでもなく拍子抜けした。間の抜けた声が口から飛び出ていったのも、そのせいである。
「ん? どうした?」
「あ、いいえ。……なんでも」
左近にそう返したものの、ふと感じた違和感は拭えない。けれど、今、この場でそれを言い出すと
「おじさん、またきます」
子供達は子供達で、小太朗が老人の耳元へそっと耳打ちした。
「あのお人が言うてはった人か?」
「うん!」
「そうかそうか。ほな、また気をつけて来ぃや。鑿はとっとくわ」
「はーい」
「ありがとうございます!」
老人に別れを告げ、皆で店を出る。
厳太夫と勘助、庄八郎の三人は、やけに大人しい、というより、お店を出た後も
「あの、先輩。今日は北を見回られるはずでは?」
「……あぁ、早く終わってね。手持
「早く終わった、ですか」
三人は目を見合わせた。
「あ、そういえば」
左近が足を止めた。里へはこの
「一つ用事を忘れてた。先に帰ってくれるかな」
「せんせいは?」
「用事を済ませたら帰るよ」
子供達と手を繋いでいた左近が手を離し、
「……随分と
「せんせいのこと?」
「そりゃあ、みんなだいすき!」
「こーれくらい!」
「そんなに? ふふっ。それはいい」
大きな円を描く子供達に、左近はくつくつと笑い声をあげる。それじゃあと手を上げ、左近は完全に彼らとは逆方向へと去って行った。
その背を、厳太夫は横目で追いかける。
「なんか先輩おかしくなかったか?」
「いつもだろ?」
「いや、そういうおかしいじゃなくて」
「まぁ、確かに、自分に一言もなく都まで来たことに、全く腹を立てていらっしゃらなかった」
「それに、あの人が罠の見回りを北だけで満足して早めに終えるか? しかも、俺達の苦し紛れの言い訳も流したんだぞ?
「……先輩なら、日が暮れるまで山中の罠を見回りに行く。それに、言い訳は絶対に聞き流さないし、許さないな」
この時、三人の脳裏に同じ言葉が浮かんで消えた。
「待て。待て待て。ということは、何か? さっきのは先輩じゃなかったって言うのか? あんなに似てたのに」
「確かに。左近先輩に
いくら当代一変装が上手いと言われる吾妻も、その恰好や仕草、声音を似せるのが上手いだけで、
だからこそ、勘助と庄八郎は自分達の頭に降って
「分からん。分からんが、雛達を早めに戻した方がいいことは確かだろ」
「……そうだな」
「よし、急いで戻ろう」
他にも見て回ろうとする子供達を上手く言いくるめ、なんとか
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