爆弾こと教祖様の部屋にある邪気の源を探れ①

「う、うわぁ……。何だか凄い事になってるな……」


 不意に見たスマートフォン(ニュースサイト)を確認すると、至る所に『顕蓮会』の文字が躍っていた。

 顕蓮会のネット記事を一つタップすると、そこには顕蓮会が行ってきた悪行の数々が列挙されている。


「こんな事までしていたんだ……。酷いな顕蓮会……」


 中には見るのも嫌になる位の暴挙まで記載されていた。

 やっぱり顕蓮会は害悪だ。

 早めに対処して本当に良かった。


『影転移』で神興会本部の建物に転移し、教祖様の部屋に向かって歩いていると、キャリーバック片手に教祖様の部屋から慌てて出て行く二人組が視界に映る。


 あれは……。


「女性部長の佳代子さんと紗良さんじゃありませんか。そんなに急いでどこに行くんですか?」


 佳代子と紗良は、身体を大きく震わせると、俺に顔を向けてニコリと微笑みかけてくる。


「あ、あらあら、悠斗君じゃないの……。今日はどうかしたの?」

「いえ、大した事ではないのですが、顕蓮会が神興会の幹部を狙って襲撃者を派遣した見たいなので心配になって……」

「えっ?」

「……それは大した事なのでは? も、もしかして!?」


 そう言うと、佳代子と紗良は二人揃って教祖様の部屋に視線を向けた。


「……えっと、教祖様の部屋に何かあるんですか?」


 教祖様の部屋に視線を向けると、佳代子と紗良は慌てた表情を浮かべ、顔を向かい合わせる。


『爆弾が爆発するまで、あと二時間はあった筈よ。紗良さん……。ここは悠斗君が爆弾を見つけた体でいきましょう。その間に私達は逃げるのよ』

『え、ええっ、そうですね。爆発するまであと二時間もありますし、そうしましょう。爆弾を見つけるだけなら、悠斗君にも危険はない筈……。その間に私達はこのキャリーバックを自宅に……』


 何を相談しているのかはわからないが、二人とも神妙な表情を浮かべている。

 そして、何かを決意したかの様に頷くと佳代子さんと紗良さんが俺に顔を向けた。


「悠斗君。あなたは教祖様から青年部長の地位を拝命された神興会の幹部候補……。そろそろ、邪気を感じ取る練習をした方がいいと思うの……」

「えっ? 邪気をですか? でも、どうやって……」


 そう呟くと、佳代子さんは教祖様の部屋を指差した。


「……教祖様の部屋から強大な邪気を感じます。これは試練よ。邪気の源を探しなさい」

「えっ? 教祖様の部屋に強大な邪気があるんですか? それはそれで問題なんじゃ……」

「こ、細かい事は気にしなくてもいいのよ! とはいえ、なんのヒントもなく邪気の源を探すのは困難。あなたにヒントを授けます」


 佳代子さんが眉間に皺を寄せて目を瞑る。

 心眼という奴だろうか……。

 きっと、今、佳代子さんは教祖様の部屋にある邪気とやらを部屋の外で感じ取っているに違いない。今日の佳代子さんはいつにも増して迫力がある。


「……テーブルの上を探しなさい。制限時間は三十分以内としましょう。ああ、それと十三時から東京国際フォーラムで『御神体供養』の儀があるから、遅れない様にね」

「は、はい。でも、邪気の源を見つけたらどうしたら……」

「そうね。もし邪気の源を見つけたら私を頼りなさい。万が一、私が近くにいなければ警察を頼るのよ」

「えっ? 警察を??」


 警察にも邪気を祓う力があるのだろうか?


「ええ、あなたは知らないかもしれないけど私達界隈では有名よ。警察は凄いの、なんでもできるの。いい? 私達が近くに居なかったり、その邪気が手に負えそうにない物だった場合、すぐに警察を頼るのよ? 110番するの。わかったわね?」

「は、はい。わかりました」


 そう言うと、佳代子さんが笑みを浮かべる。


「そう。わかってくれればいいのよ。それじゃあ悠斗君。また会いましょう」

「悠斗君。あなたなら大丈夫。きっと邪気の源を探せるわ。手に負えそうにない物だった場合、すぐに110番するのよ!」

「が、頑張ります」


 二人はキャリーバックを転がしながら、エレベーターに乗るとそのまま下に降りて行ってしまった。


「制限時間は三十分か……」


 佳代子さんは、『邪気の源を見つけたら私を頼りなさい』と言っていた。

 今、俺は神興会の幹部候補として試されている。

 制限時間三十分というのも、きっと、何らかの意図があって設定された時間……。

 そうに違いない。


「よし、やるぞ!」


 早速、教祖様の部屋の扉を開けると、テーブルの上に何か置いていないかどうかを確認していく。

 最初に教祖様のテーブルを確認するも、そこに怪しい物はなさそうだ。

 綺麗に片づけられており、もの一つ置いてない。流石は教祖様である。

 次に来客用のテーブルに視線を向ける。


「なんだこれ?」


 すると、そこには大きな紙袋が置かれていた。


 怪しい。怪しすぎる。

 きっとこれが、佳代子さんの言っていた邪気の塊とやらに違いない。

 好奇心から紙袋の中を覗いて見るも、白い箱に覆われていて、それがなんだか確認できない。

 心なしか、箱の中から時計の針が進むような音が聞こえる。

 紙袋を持ってみるとズシリと重い。

 軽い気持ちで、神化した時に得たスキル『先読』で未来を覗き視る。

 すると、教祖様の部屋が大爆発を起こす未来が視えた。

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