その後②
「えっ? はっ?」
屋敷神の一言に俺は呆然とした表情を浮かべる。
「い、いや……えっ? つ、つまり、どういう事?」
何でレベルの上限100を超えると神になるのかちょっとよくわからない。
俺、別に神様になんてなりたくないんだけど??
しかし、万が一、神になったとしても、どうにか人としての生を全うする方法はないものだろうか……。
いやいやいやいや、そんな事を冷静に考えている場合じゃない。
これは混乱している。頭の中が絶賛混乱中だ。
混乱し過ぎて考えが纏まらない。
「つまり、この世界における人の枠組はレベル100まで、それを超えるレベルになった時、悠斗様は我々と同じ存在、神と呼ばれる存在になるのです」
「な、何でそんな事に……」
屋敷神の言葉に俺は崩れ落ちた。
四つん這いになり、ガックリと項垂れる。
「通常、レベルを100まで上昇させる事だけでも困難な事です。悠斗様の場合、その類稀なる幸運と神の手助けがあって初めて、人の枠組の上限値であるレベル100に達したのでしょう」
「そ、そうなんだ……」
ガックリ項垂れる俺、笑顔を浮かべながら推論を述べる屋敷神。
「……神になったらどうなるの?」
「神になったらですか?」
俺がそう質問すると、屋敷神は考え込む。
そんなに難しい事を質問しただろうか?
「……中々、難しいですね。悠斗様が神になったら、どうなるか。まずは悠斗様の銅像をこの世界の至る所に置きます」
「えっ?」
聞き間違い……だろうか?
神になったら俺はどうなってしまうのか教えて欲しい。
そんなニュアンスで質問したんだけど……何故に銅像?
「い、いや、屋敷神? 何を言って……」
「次に悠斗様を教祖とした新しい宗教を立ち上げます。架空の神を創り上げ信仰する紛いものや、神でもない者が神を騙る罰当たり者と違い、その時の悠斗様は我々と同じ神と呼ばれる存在となっております。会いに行ける神様として信仰心を集めましょう」
会いに行ける神様!?
なにそれ??
地下アイドルやインディーズアイドルみたいに、会いに行けるアイドルをパクったものだろうか?
自分の信仰する神様に直接会える事に、どんな需要が……。
距離の近い神様を見て拝みたくなるとかそんな感じだろうか。
全然拝まれたくないし、ありがたみのかけらもないんですけど!?
「い、いや、だから……屋敷神、何を言って……」
「そして、この世界を悠斗様の意のままに塗り替えるのです」
「いや、本当に何を言っているのっ!? この世界を俺の意のままに塗り替えるって、もう、それ神様じゃなくて魔王じゃん! 世界征服しちゃってるじゃん! 俺が聞きたいのは、神様になったら俺はどうなるのかって事なんだけどっ!?」
俺がそう叫ぶと、屋敷神はポンと手を叩く。
「ああ、なるほど……話が噛み合わないと思っておりましたが、そういう事でしたか」
「う、うん。ようやく理解してくれた?」
「ええ」
漸く理解してくれた様だ。
なんだか、今の一連の話を聞き、一気に不安になった。
屋敷神がそんな事を考えていたとは……絶対に阻止しなければならない。
「人間にとって神とは、人間を超越した宗教的な存在。又は恩恵を与える人知で計り知れない力を持つ者の事をいいます。つまり、基本的には今と何も変わりません」
「えっ? 何も変わらないの??」
「はい。寿命という概念がなくなったり、絶大な神の力でこの世界に混乱を齎せない様、制限が課される可能性もありますが、悠斗様の場合、基本的には何も変わりません」
いや、どう考えても変わっているよね?
寿命という概念がなくなったり、何らかの制限が課されるって、滅茶苦茶変わっているよね??
「……しかし、一つだけ問題がございます」
「問題?」
「はい。それは信者からの信仰心。これが不足すると、神はこの世界で力を発揮する事ができなくなってしまいます。場合によっては、この世界に顕現する事さえ難しくなる事も……」
「それは大問題だね……」
屋敷神のいう事が本当であれば、信仰心がなくなってしまった神は存在を保てなくなるらしい。
「屋敷神はどうやって信仰心を得ているの?」
「私ですか? 私の場合、土地に祀られる神ですので、土地を祀る文化のある世界であればどこにでも顕現する事ができます。それに今は迷宮の守護者という立ち位置でこの世界に顕現しておりますので、迷宮の範囲内であれば、信仰心がなくなろうとも問題はありません」
「な、なるほど……」
土地を祀る文化のある世界であればどこにでも顕現できるって……屋敷神。前々から思っていたけど、マイナーな神様だと思っていたけど、実は結構凄い神様なんじゃ……。
いやいやいやいや、何を考えているんだ俺。
ついつい、信仰心を集める方法を聞いてしまったけど、俺はまだ人間だ。あとレベルが一つ上がれば神になるらしいけど、冗談じゃない。
なんとか、レベルをこのまま留める方法はないだろうか?
うーん。全く思い付かない。困ったものだ。
うん?
でもいま、屋敷神……「土地を祀る文化のある世界であればどこにでも顕現することができます」と言わなかっただろうか?
と、いう事は神になれば、元の世界に戻る事ができるって事?
その事に思い至った俺は、屋敷神に視線を向けた。
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