人形化
「ウエハス様に一つだけお聞きしたい事がございます。此度の件、何故、王族を嵌めユートピア商会を潰そうとしたのですか?
先程、『あーあっ、もうバレてしまいましたか……。ユートピア商会を潰す事も出来ましたし、王都にも経済的ダメージを与える事ができた。万々歳といった所でしょうか?』と発言していたと思うのですが……」
ウエハスは
一体どこから聞いていたのかと……。
「はっ、はははっ……。えーっと、
ウエハスがそう口にすると、
しかし、驚いた様な表情を浮かべたのは本当に一瞬だけ……。
「ウエハス様はだいぶ混乱されている様ですね。質問をしているのは私です。もう一度だけお聞きします。自分の置かれた状況をよく考えてから発言する事をお勧めいたします。此度の件、何故、王族を嵌め、ユートピア商会を
「ち、ちょっと待って下さい! ユートピア商会を
「ええ、普通の商会であれば、商会の建物ごと土地を接収されてしまえば、再起する事はほぼ不可能。王都にしか店を出していないとなれば尚更です。ユートピア商会はあなた方が仕掛けて来た謀位で潰れてしまう様な商会ではありません。それで? 私の質問に答えて頂けますか?」
「………………」
ウエハスは
「……仕方がありませんね。折角穏便に事を進め様と思っていましたのに……。
そう呟くと、
「お呼びしましたかな。んんっ? そちらの方は?」
「こちらは悠斗様が大切にされているユートピア商会を潰そうと画策した愚か者……。ウエハス様でございます」
「ほう。悠斗様が大切にされているユートピア商会を潰そうと……それはそれは」
「余程、命が要らない様ですね」
すると粘り付く様に重い空気が辺りに充満した。
ウエハスが周囲を見渡すと、いつの間にか人形に囲まれている事に気付く。
そして……。
「うわぁぁぁぁ! う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
ウエハスの手足に2体ずつナイフを持った人形が貼り付いていた。
ウエハスは、この状況にパニックを引き起こす。
「
「何故待たねばならぬのですかな?」
「まだ情報を完全に引き出せてはおりません。」
「ウエハスと言ったかな? 今お主には2つの道がある」
ウエハスは怯えながらも、
「一つは、死んだ方がマシとも思える拷問を受けた後に情報を吐き出し、人形となってユートピア商会繁栄の為に身を粉にして働く事。そしてもう一つは、素直に情報を吐き出し、人形となってユートピア商会繁栄の為に身を粉にして働く事だ。この場所を見られたからには、どちらにしても人形になる事を避ける事はできない。しかし、痛い思いをして情報を吐くか、どうか位は選ばせてさしあげよう。さあ、ユートピア商会を潰そうと謀をした愚者よ。選択するがいい」
人形になる。
ウエハスはその言葉を飲み込めない。
この老人が何を言っているのか分からないからだ。
しかし、分かる事もある。
それは……。
「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ! 腕がっ! 腕がぁぁぁぁ!」
奴らは躊躇いもなく本気でやるという事。
何と答えようか逡巡していると、人形がウエハスの腕を切り落とす。
そして、人形が即座に傷口を焼いて強制的に止血した。
「わかった! わかりましたッ! 話します! 話させて下さい!!」
ウエハスは切り落とされた腕の痛みに涙を流しながら懇願する。
そして、ポツリポツリと今持っている情報を話し始めた。
「なるほど……。あなたはオーランド王国の工作員でしたか。オーランド王国から密命を受け、ユートピア商会を潰すか、誘致するかを自らの判断で選択。誘致は無理と諦めユートピア商会を潰すべく行動を起こしたと……そういう事ですね?」
「は、はいッ! そ、その通りです! 間違いありません!!」
「……嘘は言っていない様ですね。わかりました。ご協力感謝致します」
「それでは
「はい。それでは……」
「さあ、笑いなさい。今からあなたは生まれ変わるのです。そして恨みなさい。そんな命令を下したオーランド王国の事を……」
ウエハスのいた場所。そこには笑顔の仮面を貼り付けた小さな人形が横たわっていた。
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