(閑話)転生暗部のゴブ生活
「
ロキによってゴブリンに人外転生させられてしまったマデイラ王国の元暗部ナナシは、同じく剣に転生し喋ることのできない元暗部カカシと共に、草原を走っていた。
遡ること数時間前、俺たちはベーリング宰相の命を受け、フェロー王国に住んでいる転移者、佐藤悠斗の暗殺を実行に移した。
魔法陣によって飛ばされた場所は、空は赤く、下を見れば青い海が広がっている不思議な空間だった。
そしてそいつは現れる。
「あれあれ~? また来たの~君たちも懲りないね~♪ 何度も何度もモンスターに転生させて送り返しているのに、それともボクに会いたくて、会いに来てくれたのかな~♪ ファンには優しくしないとね☆」
どうやら俺たちの行動はとっくに把握されていたらしい。
とんでもない威圧感を放つ子供が、のんびりとした口調で俺たちに話しかけてきた。
そして、そこからはあまり覚えていない。
赤い空に死神を、青い海に大海蛇を、子供の隣に大狼がいた気がするが、気が動転してそれどころではなかった。
気付けば、大狼に咥えられ、大海蛇に締め上げられ、死神に身体を腐らせられる。
しかもこの地獄、簡単には終わらせてくれないらしい。
子供が無邪気な笑顔を浮かべると、くじを5枚差し出してきたのだ。
俺の引いたクジには、ゴブリンとそう書かれていた。
そして仲間たちは、蜘蛛や剣、スライムなどにどんどん姿を変えさせられていく。
暫くすると、
ここであったが百年目! 俺たちがこんな目に合させられているのもすべてこいつが元凶だ。
「
俺は剣に変えさせられてしまった仲間を持ち、
すると俺の目の前が急に暗くなる。
そして、そのまま俺は大海蛇の尻尾に打ち据えられてしまった。
「グギャァァ!」
「お~♪ すごいすごい! あっ、殺しちゃ駄目だよ~♪ じゃあ、悠斗様お願い!」
「はぁ、わかったよ。」
突然の暗転に脳内がパニックを起こすが、すぐに明転した。
目の前に広がるそこは、国旗が飾られているマデイラ王国の大広間。
「
驚きのあまり声を上げる。
しかし、それがまずかった。なんと、部屋に武装した騎士が入り込んできたのだ。
「なに奴ッ! ま、またモンスター! まったく、どうなってるんだッ!! モンスターだ! モンスターが現れたぞッ!」
「
そう言いながらも、俺は剣を構える。
駄目だ。この数、勝ち目が薄い……。
俺は王城の図面を頭に浮かべると、最短でこの場を脱出することのできるルートを思い描く。
モンスターに変えさせられた仲間たちに斬りかかる騎士たちを尻目に、後ろに下がると、俺は窓を蹴破り、外に出た。
そして、剣に変えさせられてしまった相棒カカシと共に、暗部しか知らない道を通り、今草原を走っている。ゴブリンのでっぷりとした腹では、腹がバウンドして痛い。
相棒カカシを地面に突き立て、腰を落とすと俺はゆっくり後ろに倒れ込んだ。
まさか、暗部から一転、モンスターに変えさせられてしまうとは……。
この姿では、もう国に戻ることもできない。
戻ったところで、冒険者に襲われ殺されるのが落ちだろう。
だが問題ない。
俺はこの20年、マデイラ王国の暗部としてどんな環境でも生きていけるよう訓練されている。
俺ならやれるはずだ……そうだ! マデイラ王国の近くには森があった。
良く演習で使っていた森だ。
あそこなら、食べ物が豊富にある。
確か、訓練で使った洞穴もあったはずだ。
「
そう言うと、俺は相棒カカシと共にマデイラ王国近くにある森に行くことにした。
すると道中、嫌なにおいが漂ってくる。
酸っぱい腐臭に目が痛くなる。
俺は立ち止まると、剣を構えながら周りを見るが辺りには誰もいない。
「
鼻の大きいゴブリンは、野生の動物並に鼻がきく。
「
臭いを頼りに歩を進めていくと、近くに森が見える。
どうやら、このにおいはそこから漂ってきている様だ。
俺は暗部で鍛えられた経験を活かし、音を立てず、静かに移動を開始する。
そして、そこで見たものは信じられないものだった。
なんと、複数のゴブリンが集落をつくり暮らしていたのだ。
驚きのあまり、キョロキョロ視線を移していると、一匹のゴブリンと目が合ってしまい気付かれてしまう。
目のあったゴブリンが襲いかかってくる……と思いきや、俺を同族と勘違いしたのか。
チョイチョイと手を振ってくる。
その姿はまるで俺を呼んでいるかのように思えた。
俺は警戒しながら相棒カカシと共に、その場に向かう。
そして、そのゴブリンの前に立つと、なんと話しかけてきた。
「
「
そう言うと、そのゴブリンは口を歪めてこう言った。
「
そこはロキに姿を変えさせられたマデイラ王国の元暗部が創り上げたゴブリンの集落。
俺をこんなことにした佐藤悠斗とロキへ、そして俺たちを捨てたマデイラ王国への復讐を誓うと、そのゴブリンの手を取るのであった。
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