悠斗まさかのCランク冒険者として認定される

影転移トランゼッション】で悠斗邸に戻った悠斗は、ウッチーとトッチーにしごかれている子供たちをチラ見すると、気付かれないように冒険者ギルドに向かうことにした。


 そう、子供たちが自慢することのできるランクになるため、ランク更新をしに冒険者ギルドに向かうことにしたのだ。


 冒険者ギルドは相変わらず混んでいる。

 悠斗は受付の列に並んでいる間に、ステータスをチェックすることにした。


 最近まったく見ていなかったけど、どの位上がっているんだろう?


 悠斗が「ステータス」と呟くと、次のようなステータスが表示された。


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 佐藤悠斗 Lv:81

 年齢:15歳

 性別:男

 種族:人族

 STR(物理):1130  DEX(器用):5775

 ATK(攻撃):1130  AGI(素早):3129

 VIT(生命):3130  RES(抵抗):3130

 DEF(防御):5130  LUK(幸運):100(MAX)

 MAG(魔力):9450  INT(知力):8300

 ???(????):2940


 ユニークスキル:言語理解Lv:-・影魔法Lv:-・召喚Lv:-

 スキル:鑑定Lv:-、属性魔法Lv:-、生活魔法Lv:6

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 とんでもないぶっ壊れステータスになっている。

 悠斗が茫然としていると、俺を呼ぶ声が聞こえてきた。どうやら、俺の順番が来たらしい。


「ようこそ、冒険者ギルドへ。本日はどのようなご用件でしょうか。」


「ヴォーアル迷宮で、モンスターを狩ってきました。モンスター素材の買取と、この目録にあるモンスターの討伐依頼をお願いします。」


「はい。目録を拝見させて頂きます。」


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 ゴブリン×120

 ホフゴブリン×120

 ゴブリンロード×60

 オーク×120

 オークロード×60

 オークジェネラル×60


 ロックベア×1


 ウェークオリックス×120

 ウェークチーター×120

 ウェークバイソン×120

 ビッグピューマ×60

 シルバーフォックス×60

 デッドベア×10

 バジリスク×2


 スノーラビット×200

 スノーウルフ×120

 皇帝ペンギン×120

 アイスベア×60

 イエティ×15


 マンドレイク×2

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 ゴブリンからオークジェネラル迄のモンスターは、収納指輪に収められているマデイラ王国で狩ったものだ。折角なので、俺のランクを上げるための糧になってもらおう。


「こっ、これはっ……。それでは、この目録に合った討伐・常設依頼を集めておきますので、素材買取カウンターの倉庫でお待ちください。すぐに、職員を向かわせますので。」


 悠斗は立ち上がると、冒険者ギルドに併設されている素材買取カウンターの倉庫へと向かうことにした。


 しばらく、倉庫前の扉で待っていると、昨日対応してくれたフェニックスさんがこっちに向かってやってくる。


「大変お待たせいたしました。私は、王都支部素材買取カウンターの支配人のフェニックスと申します。おや、君は……悠斗くんだったかな? それでは、こちらへどうぞ。」


 フェニックスさんが倉庫の扉を開け、俺達にも入ってくるよう促してくる。


「それでは、目録にあったモンスターを拝見させて頂きたいと思います。こちらの床にモンスターを出して頂いてもよろしいでしょうか?」


「はい。それでは失礼してっ……。」


 そういうと悠斗は、収納指輪と【影収納ストレージ】から次々とモンスターを取り出していく。

 もちろん、前回同様にモンスター毎に数えやすいよう並べていくことも忘れていない。


 悠斗が床にモンスターを置いていくと、それを見ていたフェニックスさんの眼鏡が相変わらず徐々に傾いていく。


 最後にマンドレイク2体を床に置くと、フェニックスさんに向かって振り向く。


「これでよろしいでしょうか? ああ、【氷系統モンスターの魔石】はこちらにすべて渡してくださいね。」


「…………ッ。」


 フェニックスさんの開いた口が塞がらない。声を出すこともできない位、驚いている。


「あの~? フェニックスさん??」


 どうしたんだろう? なんかすごく驚いた顔をしている……。前にもこんなことがあったような……。


 悠斗がそんな事を思っていると、『ハッ!』と我に返ったフェニックスさんが返事をしてきた。


「もっ、申し訳ございません。少しばかり茫然としておりました。すぐにモンスターのカウントを行いますので、こちらの木版を持ってギルドでお待ちください。解体後、氷雪系モンスターの魔石は優斗様にお渡しいたします。カウントが済み次第、個室に呼ばれると思いますので、受付近くで待っていただけると幸いです。」


 そういうと、フェニックスさんは俺に木版を渡し、モンスターのカウントを始め出した。

 邪魔になってはいけないと、冒険者ギルドにきびすを返すことにする。


 冒険者ギルドで待つこと数十分。ようやく、カウントが終わったようだ。


「受付でお待ちの悠斗様、いらっしゃいませんか?」


「はい。ここにいます。」


 悠斗が返事をすると、受付嬢さんはニコリとほほ笑み、個室へと案内してくれる。

 部屋には書類の束を持ったギルドマスター、キルギスさんが待っていた。


「どうぞ、ソファーへとお掛けください。」


 キルギスはそう言うと、受付嬢さんは扉を閉め去っていく。

 悠斗が椅子に座るとキルギスさんが話しかけてきた。


「大変お待たせいたしました。今日はお一人ですか? 早速で申し訳ございませんが、悠斗様のギルドカードをお預かりしてもよろしいでしょうか?」


 悠斗はギルドカードを、キルギスさんに渡すと、机の横に置いてある魔道具にギルドカードを押し当てていく。


 キルギスさんは悠斗のギルドカードを、魔道具に押し当てると、「どうやら本当のようだなっ……いや、しかし……」と呟き、机に書類の束とペンを置いていく。


 どうやら書類の束と思っていたものは、常設依頼と討伐依頼の依頼書のようだ。

 なんだか前にもこんなことがあった気がする。


「さて、先ほど素材買取カウンターより、悠斗様が作成した目録通りのモンスター数を確認したと連絡がありました。つきましては、ランクアップ手続きを進めるため、こちらの依頼書にサインをお願いします。」


 おお、ようやく子供たちに誇ることのできるランクにランクアップできる!

 悠斗は、依頼書の束に次々とサインをしていき、サインが終わると書類すべてをキルギスさんに手渡した。


「はい。これでおしまいですね!」


「ああ……。」


 悠斗が依頼書にサインを終えると、キルギスさんは気まずそうに話を切り出してくる。


「先ほどギルドカードに登録されている討伐数を確認させて貰いました。間違いなく、あのモンスターは君が倒したものでしょう。しかし、討伐数を欺く方法はいくらでもあります。」


 うん? キルギスさんは俺に何を伝えたいんだろう?


「実はですね……まだ冒険者ギルドに加入したばかりのEランク冒険者である君にこれだけのモンスターを倒すことができるのか疑問の声があがっています。そのため、申し訳ないのですが、現状、君のランクをCランクまでしか上げることができません。」


 その言葉を聞いた悠斗の頭の中は真っ白に染まる。


なっ、なん……だと……。子供たちになんと説明すればいいのだろうか。


「……えっ、でも従業員たちは……いえ、俺と一緒に来たDランク冒険者の皆さんは、Bランクに上がったじゃないですか? なんで俺だとダメなんですか?」


「彼らはDランク冒険者として、長く活動してくれていたからね。信頼と実績の両方を提示されたら適正ランクまで上げるのは当然のことです。とても言いずらいのですが、君の場合は、冒険者での活動歴があまりないようですし、いきなり実績を提示されてもなかなか……。」


 はっきり言って予想外である。

 冒険者ギルドは、実力主義で、結果を出したものに相応のランクが与えられる公平な組織……そう思っていた。


 しかし残念ながらそうではなかったらしい。

 確かに、Eランク冒険者がいきなりAランク冒険者でも単独で倒すこと難しいモンスターを大量に卸してきたのだ。疑う気持ちは分かる。


 しかも、キルギスさんは『ギルドカードに登録されている討伐数を確認させて貰った』と言ったではないか。知らなかったが、ギルドカードにはそんな機能が付いていたらしい。


 だとすれば、これまでの討伐数も当然見ることができたはずである。

 どう考えても、討伐数を欺くなんてことは不可能だ。なんなら、今まで数千単位でモンスターを倒した気がする。


 残念ながら、冒険者ギルドは実力主義で、結果を出したものに相応のランクが与えられる公平な組織ではなく、見た目やランクで主観による偏った判断を下す不公正な組織だったようだ。


 なんだ、これだけのモンスターを一人で倒して、頑張って書類にサインしまくったというのに、一部のギルド職員が疑いの目を向けただけで、俺のランクはCランク止まりか……。


 悠斗は乾いた笑いを浮かべる。


 いや、きっとCランクってすごいランクなんだ。未踏破の迷宮を64階層まで一人で潜り抜け、1,550体にも及ぶモンスターを冒険者ギルドに収めることができるんだろう。ははっ、すごいや。


 マデイラ王国にいたカマ・セイヌーさんが確かCランクだったはずだ。


 あのカマ・セイヌーさんが、俺と同じようなことができるとは知らなかった。彼らは全員、俺に喧嘩を売って、最終的にはギルドマスターの奴隷になったような気がするけど、きっと気のせいだろう。そんなに強かったとは本当に知らなかった。


 とはいえ、明日のお昼までには子供たちに俺のランクを告げなければならない。なぜなら、午後には子供たちが学園に帰ってしまうからだ。


 Cランクかカマ・セイヌーと同じ……。Aランクの先生に紹介するには厳しいランクだよな……。


 今、Cランク冒険者と認定されることは、俺からしてみればEランク冒険者として認定されていることと何ら変わり映えはしない。


 公正な判断のできない、俺の努力すら認めないギルドにわざわざいる必要性があるのだろうか?

 ギルドが、なんの役に立っただろうか? 精々、ギルドカードが身分証明書として役に立つくらいだ。


 モンスター素材の販売なら【私の商会】でもできる。


 もう冒険者ギルドなんて辞めてしまおう。身分証を一時的にでも失うことになるから本当はやめたくなし、ヴォーアル迷宮にはいることはできなくなるが仕方がない。その時は、スヴロイ領で見つけた迷宮に行けばいいのだ。


 まあBランク以上に上げてくれるなら条件次第で考え直すけど……。


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討伐依頼の目安です。


【Aランク依頼】

・ゴブリンキング 1体討伐

・オークキング 1体討伐

・ロックベア 1体討伐

・未踏破の階層を1階層突破

・未確認モンスターの発見、討伐

・護衛任務、盗賊団の壊滅、他


【Bランク依頼】

・オークジェネラル 1体討伐

・オークメイジ 1体討伐

・ゴブリンジェネラル 1体討伐

・ゴブリンメイジ 1体討伐

・未踏破の階層を1階層突破

・未確認モンスターの発見、討伐

・護衛任務、盗賊退治、他


【Cランク依頼】

・オークロード 2体討伐

・ゴブリンロード 2体討伐

・護衛任務


【Eランク依頼】

・オーク 5体討伐

・ウルフ 5体討伐


【Fランクの常設依頼】

・ゴブリン・ホフゴブリン 10体討伐


※ 『第29話 第一章終了時点のステータス&キャラ紹介』に冒険者ギルドの昇格条件を記載しました!

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