毒にまみれた階層
悠斗が第63階層のフィールドを見渡すと、またしても草原フィールドであった。
正直もう勘弁してほしい。
今度はどんな厄介なモンスターがいるんだと、【鑑定】しながら辺りを見渡すも、モンスターはいないようだ。
不思議に思い、【
精々、草原に蝶々が飛んでいる位である。
「モンスターが全くいないフロアなんて初めてだっ……。」
思ったことをポロっと洩らすと、第64階層へ続く階段へと向かうことにした。
それにしても、本当にのどかな風景である。迷宮の中とは思えない。
草原というより植物園やフラワーパークの中を歩いているような気分だ。
朝露の霧が迷宮内を照らす光と相まって幻想的な風景を作り出している。
少し立ち止まり、きれいな空気を肺に取り込み深呼吸をすると、不思議と気分が洗われるような気がした。もしかしたら、61階層からの疲れが溜まっていたのかもしれない。
悠斗が周りを見渡すと、色とりどりの花が咲いている。
ふと、咲いている花に触ろうとすると、【髪飾り(虫の知らせ)】が震えだした。
『悠斗……その花……毒がある、触っては……ダメ。』
久しぶりに、妖精さんの声を聞いた気がする。
それにしても、毒草とは……、悠斗が今触ろうとした毒草に【鑑定】を使用してみると、このように表示された。
--------------------------------------
ジャイアント・ホグウィード
効果:毒がある。触ると細胞まで浸透し、ひどい火傷のよう症状を引き起こす。樹液が目に入ると失明するので注意が必要。
--------------------------------------
とんでもない毒効果を持つ花だった。触っていたらヒドイ目に会うところだ。
「妖精さん、ありがとう!!」
悠斗は妖精さんに感謝すると、辺りに生えている花や蝶々等にも【鑑定】を使用してみることにした。
--------------------------------------
ジャコウアゲハ
効果:体内や燐粉に毒を蓄積する能力を持つ蝶々。毒の蓄積度合いにより羽の色が変わる。赤い羽根の個体には注意が必要。
--------------------------------------
--------------------------------------
ローレルジンチョウゲ
効果:実、花、茎、葉のすべてに毒があり、触るとひどい水ぶくれや炎症を起こす。食べると、甘く美味。しかし、食べると循環器、中枢神経系が侵され死に至る。
--------------------------------------
--------------------------------------
ドクウツギ
効果:毒がある。触ると細胞まで浸透し、麻痺症状を引き起こす。赤紫色の実はとても甘く美味。しかし、食べると呼吸困難、内臓出血を引き起こす恐ろしい植物。
--------------------------------------
悠斗が周囲を【鑑定】してみると、毒、毒、毒と、このフィールドに生えている植物全てが、とんでもない効果を持った毒草に満ち溢れていた。モンスターが存在しない筈である。
初めに【鑑定】した時は、モンスターの在否ばかりに気をとられまったく気付かなかった。
それに一番驚いたのが、幻想的な風景を作り出していた朝露の霧だ。
【鑑定】によると、幻想的な風景を作り出すただの毒霧だった。
毒に侵された空気を肺に取り込み深呼吸をすると、不思議と気分が洗われるような気がしたのはどうやら気のせいだったようだ。
【状態異常無効の指輪】がなければ危ないところであった。
このフロアは、攻略者を完全に殺りにきている。
そう考えなければ、ありえない位の悪辣さである。
悠斗は、このフロアにある植物のすべてを【
次のフロア、第64階層はまさかの10畳ほどの個室だった。正直驚きである。
一瞬、この迷宮の迷宮核が安置されている階層と錯覚したほどだ。
個室には、宝箱と、その奥に次のフロアへの階段が見える。
悠斗が宝箱を【鑑定】してみると次のような宝箱であることが分かった、
--------------------------------------
宝箱
説明:強力なアイテムや、レアな素材が収められている宝箱。
--------------------------------------
まさかの、普通の宝箱である。
しかも、モンスタートラップもないのに強力なアイテムやレアな素材が納められている宝箱だ。
悠斗が恐る恐る宝箱を開くと、そこには【スキルブック】が収められていた。
今までの経験上、スキルブックを手に取り、パラパラとページをめくると、謎のアナウンスが流れユニークスキルもしくは希少なスキルを手に入れることができる優れものだ。
悠斗はこの【スキルブック】を収納指輪に収めると、次の階層に向かうことにした。
第65階層に辿りつくと、そこは今までの草原フィールドとは打って変わって、瘴気漂う墓地フィールドとなっていた。
墓地フィールドを一望した悠斗は、【
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます