影収納の全く効かないモンスターたち
悠斗が【魔法の絨毯】に乗り、空に上がろうとすると数十本の蔦がこちらに向かって伸びてくる。
「うわっ!!」
咄嗟に、【
「あっ、危なかった……。」
【
しかし、これだけ蔦で攻撃されたからには、やり返したい。
やられたらやり返す、倍返しだッ!
そう思った悠斗は【魔法の絨毯】の上から、【火属性魔法】の【
しかも、放たれる【
一発一発に、通常ではありえない位の魔力を溜めこんだ【
トレントの森は阿鼻叫喚の地獄状態、土におろした根を引き上げ右往左往している。
しまいには、自分が生き残るため、行く道を邪魔する
しかし、そんなトレントたちを上空から眺めている悠斗は追撃の手を緩めない。
【
トレントの蔦攻撃は、捕まえてしまえば悠斗を死に至らせるほどの物量攻撃だった。
そんな攻撃を受けた悠斗には、まったくと言っていいほど慈悲の心はない。
はっきり言って皆無である。
程なくして悠斗が下を見下ろしてみると、まるで大規模な森林火災のように、森が赤く染まり、上空には焼かれたトレントたちによる黒煙が空を覆っている。
悠斗は黒煙の被害を受けないよう、【魔法の絨毯】で第61階層への階段付近に移動すると、ポツリと呟いた。
「や、やり過ぎた……。」
前人未到の階層ということもあり、何の
黒煙も迫ってきているし、ここに留まるのはなんか危険そうだ。
悠斗は、トレントの魔石や素材を回収することを諦め、次の階層に向かうことにした。
第62階層も、森フィールドのようだ。
ここに出てくるモンスターが、トレントのように【
悠斗は、警戒しながら【鑑定】で周囲を見渡す。
すると、地面に
マンドレイクとは、古くから薬草として用いられて、魔術や錬金術の媒体として有名なナス科の植物である。【鑑定】によると、この世界のマンドレイクはモンスターとして扱われている様だ。
それにしても、夥しいほどのマンドレイクである。
モンスターとして認識してしまった以上、マンドレイクの上を歩いていくのもなんとなく恐いものがある。
「それにしても……。」
マンドレイクは人のように動き、引き抜くと悲鳴を上げて、まともに聞いた人間は発狂して死んでしまうという伝説がある。
とはいえ、ちょっと引き抜いてみたい気持ちもある。
悠斗は【
そう、自分の代わりに【
【
――ママァァァァッ! ヤメテッ! ツチニモドシテッ!! クッ、クルシイッ! アァァァァァァァ!!!!
――アァァァァァァァァ! ノロッテヤル! ノロッテヤル! ノロッテヤルッ!! ワタシノコドモヲカエセェェェェ!!!
といった幻聴が頭に響いてきた。
これは確かに、まともに聞いたら発狂して死んでしまうかもしれない。
いまの言葉をマンドレイクから人に置き換えて貰えば、その凄惨さが分かることだろう。
「これを直に聞いたら死にたくなるなっ……。」
流石は前人未到の第62階層、悪辣さを感じさせるモンスターの出現に辟易としてしまう。
「仕方がない、これを引き抜くのは諦めて先に進むか……。」
悠斗は影に潜みながら【
しかし、【
――ギャァァァァ!
――フムノハヤメテェェェェ! シヌゥゥゥ! シンジャウゥゥゥッ!
――アァァァァァッ! ノロッテヤル! ノロッテヤル! ノロッテヤル!!
といった幻聴が聞こえてくる。
正直言ってやりにくい、こんな階層は初めてである。
既にこの時点で、心が折れそうだ悠斗邸に帰りたくなってきた。
いやしかし! ここで諦めたらBランク以上の冒険者になって子供たちを喜ばせることができない。
悠斗はマンドレイクの幻聴に惑わされず、信念を固めると、【魔法の絨毯】に【
はっきり言って、マンドレイクを踏むのも抜くのも、もう勘弁という気持ちである。
あんな怨嗟の声を聴いているだけで自責の念に押し潰されそうだ。
結局、悠斗は第61階層、62階層と続けてモンスター素材を獲得することができなかった。
【魔法の絨毯】で第63階層へと続く階段に辿りつくと、【
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