影を纏って収納するだけの簡単なお仕事(再び)
子供たちとの楽しい会話を終えた悠斗は、久しぶりにウッチーやトッチーと魔法の練習や勉強の予習をしたいという子供たちのリクエストに応え、ウッチーたちに子供たちを任せると一人でまたヴォーアル迷宮の第50階層に来ている。
第50階層のボス部屋の扉を開き、部屋にある魔法陣まで歩を進めると、数時間前に倒したばかりのボスモンスター、バジリスクが奇声をあげながら悠斗に石化の視線を向けてきた。
「ギュアアアアアアッ!!!」
しかし、当然ながら悠斗には通じない。
それもそのはず、悠斗が指に嵌めている【状態異常無効の指輪】。これは、すべての状態異常を無効化にする効果がある。
バジリスクが自身の能力である【石化の視線 】をどんなに向けようが悠斗にはまったく効果がない。
そんな事を知らないバジリスクは、攻撃することなくひたすら悠斗に視線を向け、そのまま【
先に収納されてしまったバジリスクと共に【
バジリスクを【
これには悠斗驚きを隠せない。まさか、砂漠フィールドの後、すぐに氷結フィールドが広がっているとは思ってもみなかった。
とはいえ、ここは悠斗にとってのチャンスステージ。
こういった場所に住むモンスターは、殆どといっていいほど【氷系統の魔石】を身に宿している。
この【氷系統の魔石】は希少でほとんど市場に出回らない。
というのも、殆どの迷宮でそんなフィールドのある迷宮が発見されていないからだ。
この情報を冒険者ギルドに情報提供するだけでもひと財産を稼ぐことができる。
しかし、俺はそんなことはしない。
【氷系統の魔石】は俺の思い描いていた、元の世界の三種の神器の一つ【冷蔵庫】や【冷凍庫】を作成する足掛かりになり得るからだ。
クラーケンやキラーシャークなどの【水系統の魔石】を使うことで蛇口から水が出たり、トイレの流しに利用することができる。【氷系統の魔石】を使えば、きっと冷蔵庫を造ることができるだろう。
それに、この階層は未踏破の階層だ。
ここで【氷系統の魔石】を大量に獲得しておけば、この冷蔵庫すらない世界で冷蔵庫を造る時、その技術(といっても魔石を嵌めるだけだが)を独占できるかもしれない。
悠斗はニンマリと口を歪ませると、【
【
悠斗はこれまでの階層と同じように、階層を駆け次々とモンスターたちを【
悠斗が第60階層のボス部屋に辿りつくと、これまでとは違うプレッシャーが悠斗を襲う。
よくよく考えれば、60階層以上を誇る迷宮の攻略は初めてである。
悠斗がボス部屋の扉に手を振れ、開くと扉の奥底にある広場で大きな魔法陣が輝きだした。
するとそこには、十数体の全身が白い毛に覆われた雪男、イエティが現れる。
イエティたちは悠斗に視線を向けると雄叫びをあげ襲いかかってきた。
しかし悠斗は動じない。悠斗にとって、これはただの作業。
影を纏って走りながら収納するだけの簡単なお仕事である。
悠斗はイエティを【
しかし、まだまだ足りない。
一夜にしてEランクをBランク以上にするためには、これ以上の成果が必要なはずだ。
そんな簡単にBランク以上、ましてはAランクになれる訳がない……好んでなりたいわけではないけれども……。
Bランク冒険者のことをひいき目で見過ぎている悠斗にそのことが分かるはずもない。
既に人類未踏の階層を20階層も上に来ている。
それだけで、普通であればAランク、場合によってはSランクになるというのに、悠斗の場合、そのことを全く理解せず迷宮を踏破しようとしている。
もちろん、ハメッドさんに迷宮核を抜き取ると犯罪者扱いされると聞いていたため、まったく迷宮核を抜き取る気はないが、ギリギリまでは攻める気ではいる。
悠斗は、子供たちに
第61階層は、森フィールドのようだ。
しかし、なんだか森の様子がおかしい。
気になった悠斗は、森に入る前に【鑑定】であたりを見渡してみた。
すると、視界に移るすべての木々がトレントいうモンスターであることを教えてくれる。
どうやらこの森は、トレントが密集してできた森らしい。
「さて、どうするか……。」
流石の【影魔法】でも、地面に根付いたトレントを収納することはできない。
しかし、この森を抜けなければこのフロアを走破する事も出来ない。
こんな時は、あれを使うに限る。
そう【魔法の絨毯】である。
なにも馬鹿正直に森の中を突っ切る必要性はまったくない。ただモンスター素材が取れないだけだ。
悠斗は【魔法の絨毯】を召喚すると、森ではなく空からの攻略を開始した。
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