店舗爆誕!

 悠斗邸に戻った悠斗は早速、ウッチーに商業ギルドであったことを相談することにした。


「ウッチー、例えば、迷宮で採れる素材や、鉱物、肉を売ったとしたら、ひと月当たりいくら位の収入が見込めると思う?」


 ウッチーが少しばかり考え込むと、とても曖昧な回答を返してきた。


「悠斗様次第にございます。迷宮がここにある以上、ハッキリ申し上げまして、敵はございません。例えば、商業ギルドに加盟する商人が悠斗様の商店の隣で、紙1枚当たり鉄貨1枚(約100円)で販売しだしたとしましょう。しかし、悠斗様はそのさらに下を行く価格を自由に設定できるのです。なにせ元手がタダですから……。さらに、畜産に関しても同じことです。例えば、商人たちがミノタウルスのロース肉を100g鉄貨3枚(約300円)で販売したとしましょう。しかし、迷宮を持つ悠斗様はそのミノタウルスのロース肉を100g鉄貨3枚以下で自由に設定できる訳です。果たして勝負になりますでしょうか?」


 たっ、確かに……考えてみたら、まったく勝負にならない気がする。なにせ、こちらの負担はまったくのゼロだ。どうやって商業ギルドは俺に横やりを入れるつもりなのだろうか?


 悠斗が、ウッチーに相談をしている頃、商業ギルド側では会議が行われていた。


「Aランクの悠斗様が、一時的に商業ギルドを脱退し、商売をしてみたいと言ってきました。悠斗様はこれまでに、ポーションや紙、仮設機材などの販売について商いを行ってきています。その商いに近い業種の方へ、商業ギルドから支援金を拠出することを提案します。」


「しかし、一体いくらの支援金を出したらいいのか皆目見当がつきませんな……。そういえば、以前に、【私のグループ】のアラブ・マスカット評議員が一時的に商業ギルドを脱退して大問題となりましたね、あの時は、宿泊業、卸売業などの業種で怨嗟の悲鳴が上がりましたな。結果的に、冒険者の足元をみて高い宿泊料をとっていた宿泊業や、商業ギルドの規制を潜り抜け粗悪品を売り捌く悪質な卸売業が多く廃業に追い込まれたことにより、宿泊価格が安定し、悪質な業者を一掃することができましたが……。」


「あの時は大変でしたな……。最終的に、商業ギルドに戻ってきてもらいましたが、あの時は商業ギルドの存在意義が大きく揺らぐことになりました。」


「まずは様子を見ることにしましょう。」


 商業ギルドでは悠斗対策会議が夜深くまで行われたのである。



 一方、悠斗邸では、ある問題に直面していた。


 今までは、商業ギルドにポーションを流したり、アラブ・マスカット会頭の【私のグループ】やハメッドさんに買って貰っていた。(まあ、これからもその二人の商会が断らない限り商品を卸していくわけだけど……。)


 今の悠斗邸には、商品を売るための設備や店舗、商品を売るための人もいないのである。


 さて、どうするか……。


 悠斗が悩んでいると、ウッチーが声をかけてきた。


「悠斗様、まずは悠斗邸の広場を少し削り、大通りに沿ってお店を建ててみるというのはいかがでしょうか? この敷地のすべてが迷宮扱いとなっておりますので、私の【迷宮変化チェンジ】を使えばすぐにでも店舗を建てることができますが……。」


 結構いいアイディアではないだろうか?


「じゃあお願いしてもいい? あっ、一応、人を雇うつもりだから、住み込みでも働くことができるよう、店舗付きの物件を建ててくれる?」


「承知いたしました。」


 そういうと、ウッチーは悠斗の頭に触れ、イメージを読み取ると【迷宮操作チェンジ】を発動させる。

 すると、大通りに面している塀の一角が店舗付アパートに変化した。


「おおっ……。」


 流石はウッチー屋敷神、まったくの工事音もなく悠斗のイメージ通りの店舗付アパートが大通りに面している塀の一角に出来上がった。

 悠斗邸の壁沿いを歩いていた人はさぞかし驚いたのではないだろうか?


 店舗のイメージは小型ホームセンターだ。

 悠斗邸は大通りに面しているし、多くの集客が見込めるだろう。


「悠斗様、この店舗に【空間属性魔法】を付与してください。付与することで、店舗内の時空を歪め見た目よりも広く空間を使用することができます。」


 ウッチーに言われた通り、付与のブレスレットで【空間属性魔法】を付与していく。


「さて、ウッチーのおかげで店舗ができた。」


 この店舗に悠斗が作成したポーションや魔法を付与した魔道具、迷宮で採れる鉱石や食材の販売、仮設機材の販売、貸出を行うことにする。イメージはホームセンターとスーパーの融合である。


 次に、店員さんの確保だけどどうしようか……。


 商業ギルド……には頼れない。かといって、冒険者ギルドに店員さんの募集をかけるのもなんか違う気がする。


「仕方がない。求人票を店舗のディスプレイにでも貼って、働いてくれる店員さんを募集することにするか。」


 宣伝にもなって丁度いいし、開店するまでの間、お店のディスプレイにデカデカと求人票を等間隔で張り付ける。


 ウッチやトッチーと相談した結果、次の内容で店員さんの募集をかけることにした。


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 年齢不問! 研修あり! 一緒に働いてくれるオープニングスタッフ大募集!

 採用希望の方は、隣の悠斗邸にて面接を致します。備えつけのチャイムを押してください。(受付時間8:00~12:00)

【採用数】

 50名

【月収】

 基本給:白金貨3枚以上(昇給年1回、賞与年2回)

【仕事内容】

 接客販売、店内清掃、商品陳列、品出しなど

【勤務時間】

 8:00~17:00(うち休憩1時間)

【休日】

 週休2日(シフト制)

【待遇】

 時間外手当あり

 退職金制度あり

 社宅・家賃補助あり

 その他各種手当あり

 服貸与

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 どちらにしろ、悪意のある人はウッチーとトッチーの【自動防御ディフェンス】により悠斗邸はおろかお店にすら入ることはできない。

 あとはいい人材が来てくれることを天に願うばかりである。

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