僕らは小さな駅に降りた

色のちがった電車が来たら乗り換えようとしているらしい

北に向かって背の高い樹が何本も並んでいる

僕の地図にはこの街路樹は描いてなかった

自動車の警笛が長い長い余韻を残して風景に溶けてゆく

この街の音が澄んでいるのは、きっと風が冷たいからだね

Eが言うと

街の風は僕の中で渦を巻いた。


憶い出さなきゃならないことは何だったんだろう

あなたがわたしを迎えに来たこと

Eは応える

むかし

振り返ったのに

あなたはいなかった

せっかく逃げたのに

追いかけて来なかった


僕は、街並みを眺めていたんだ

深く沈んだ優しい風景を

ながめていた

その時Eが走りだして

ふと想ったんだ

僕らは過去むかしをつくっていると


この駅は一時間に二本しか電車が来ないから

一緒に居られる時間が長いね

Eは笑いながら言う

たすけてくれよと僕はつぶやいたのかもしれない

Eの心が動いた気がした


Eよ

おまえの夢をときどきみるよ

せつない夢をときどきみるよ

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