囲炉裏

おふくろは年をとった

せがれ二人は、ひょうひょうと

その日その日を暮らしている


上の息子は都会まちに出た

むかしは兄がうちに居て

御次おじの方が出稼ぎとおふくろはつぶやくが

こんなに寒い冬の夜には

二人とも居ればいいと

本当はいいたい


古い囲炉裏いろりは部屋の飾りだ

五年も前から火の気はないが

ふさぐ手間もかかりだと

おやじはそのままにしておいた

石油があるから、もう用ずみと

おふくろは火箸ひばしでつつく

寒さが

灰の中までとお


今夜も表はボタ雪だ

さくさくと雪堀ゆきほりの音がする

際限きりがねえなと言いしまに

次男はコシキを振るっている

今年も雪が豊作だと

大声で笑う

手伝おうかとおふくろが言っても

外からは返事がない

雪だけは毎年降るねと静かに言って

おふくろは囲炉裏の灰をつつく


今年の寒さを灰にして

囲炉裏の年が再た増えた


やがて、おふくろは

おやじが寒かろうと

ほそぼそ燃えるストーブを引きずって

奥の仏間ぶつまへ移ってしまう


ひとしきり雪が降り

古い囲炉裏はさみしくなる

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