雪
千年も万年も
降り続けてきたんだと
雪はいう
おまえの
そのまた親父も爺様も
おれはみんなみてきたと
おれのひと粒ひと粒が
ひとりのこらず憶えていると
闇を
えんえんと語り続ける
すべていのちのいとなみに
冷たい重みをかけてきた
いく層となくつみかさね
時の
ひと代ひと世の
おれのよどみがやわらげて
ほのかな影に
この世あの世の
おぼろにするほど降るのだと
雪はいう
ひとつところと
かわらぬ
音も匂いも色も無い
冬の景色にするのだと
何里にもわたる低い声を
木樹の芯まで忍ばせる
この里もこの
みえぬ果てまでうめ尽くし
光のしめすものすべて
音のしらせるものすべて
夢も
想いの底に降ろすのだ
いのちすべてのうちがわに
うつろな冷気を
ありとあらゆる
昔もいまも
雪はいう
雪はいう
夜の
冬のかたちに変えてゆく
いつかはおまえも、と
雪は言葉の模様を変える
おまえの親父と同様に
おれの里に帰るのだ
おまえが何処に居ようとも
おれの温度はお前にしみて
消えることがないのだから
おれはお前の奥底で
消えることがないのだから
雪はうねりをもとにもどし
千年も万年も、と
くりかえす
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