36

山の端から朝日が昇ろうとしている。

明るくキラキラとした白い光が周囲を照らし始めた。


「さて、どうやって帰ろうかなぁ?」


深夜の暗闇の中、通ってきたはずの参道が見当たらない。一体私はここまでどうやって来たのだろう。携帯を確認すると、未だ圏外のままだった。


神様たちに声をかけようかと思ったが、今さら戻るなんて野暮な気がした。せっかく二人気持ちを通わせたのだから、存分にラブラブしてほしい。部外者は消える。それが私のラブラブ大作戦だ。


下山する道を見つけるために境内をうろうろと歩いていると、「アオイ」と名前を呼ばれて私は振り返った。

そこには火の神様が一人で立っていた。


「アオイ、咲耶姫と話をさせてくれてありがとう。」


「いや、私は何もしてないですよ。」


「お前の家まで送っていこう。」


火の神様はおもむろに私を抱える。


「きゃあっ!」


突然横向きに抱えられて、そう、これはいわゆるお姫様抱っこってやつで、私は思いっきり動揺してしまう。


「お、おろしてください~!」


「しっかりつかまるのだ。」


「ひ、ひゃぁぁぁぁ~。」


火の神様が地を蹴った瞬間、ものすごいスピードで空へのぼった。思わず火の神様の首もとへしがみつく。


ああ、咲耶姫様ごめんなさい。

私、火の神様にべったりくっついています。だけどしがみつかないと落ちちゃうんです~!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る