12

私が凝視しすぎたのか、その美人さんは慌てて袖で顔を隠すような仕草をした。

それに伴って私も我に返る。


「あ、えっと、すみません。勝手にお邪魔して。あの、えっと、雨と雷が止むまで雨宿りさせてもらえませんか?」


きっと神社の管理人だと思い、申し訳なくもお願いすると、その美人さんはとても驚いた顔をして私を見た。


「お前、私が見えるのだな。」


「え?はい?」


見えるもなにも、先に声をかけてくれたのはそっちじゃないのかと不思議に思う。

と同時に、この美人さんはもしかして見えてはいけない何かなのかと、思わず身構えた。


「こちらへ来るがよい。」


美人さんは手招きをしながら奥の襖を開けた。襖の向こうからは明るい光が漏れている。


これは、行ってはいけないやつ、とかじゃないよね?

美人さんは何者?

幽霊、とか?

食べられたりしないよね?

襖の向こうは別世界とか?

まさか?


一瞬のうちに悪い考えがどんどん浮かび、私の足は動かない。美人さんと襖を交互に見てしまう。


「何をしているのだ。寒いだろう?中へお入り。何もとって食おうなんて思ってはおらぬ。」


私の心を見透かしたかのように妖艶に微笑む彼女の瞳に、まるで吸い込まれるように私は歩を進めた。

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