12
私が凝視しすぎたのか、その美人さんは慌てて袖で顔を隠すような仕草をした。
それに伴って私も我に返る。
「あ、えっと、すみません。勝手にお邪魔して。あの、えっと、雨と雷が止むまで雨宿りさせてもらえませんか?」
きっと神社の管理人だと思い、申し訳なくもお願いすると、その美人さんはとても驚いた顔をして私を見た。
「お前、私が見えるのだな。」
「え?はい?」
見えるもなにも、先に声をかけてくれたのはそっちじゃないのかと不思議に思う。
と同時に、この美人さんはもしかして見えてはいけない何かなのかと、思わず身構えた。
「こちらへ来るがよい。」
美人さんは手招きをしながら奥の襖を開けた。襖の向こうからは明るい光が漏れている。
これは、行ってはいけないやつ、とかじゃないよね?
美人さんは何者?
幽霊、とか?
食べられたりしないよね?
襖の向こうは別世界とか?
まさか?
一瞬のうちに悪い考えがどんどん浮かび、私の足は動かない。美人さんと襖を交互に見てしまう。
「何をしているのだ。寒いだろう?中へお入り。何もとって食おうなんて思ってはおらぬ。」
私の心を見透かしたかのように妖艶に微笑む彼女の瞳に、まるで吸い込まれるように私は歩を進めた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます